日本のレガシーシステムが抱える3つの危機
東京システムハウスがDX推進を加速させる背景には、日本企業が直面する3つの構造的課題が存在します。
第一に、基幹システムの老朽化とブラックボックス化です。COBOLなどのレガシー言語で構築された基幹システムは、依然として社会インフラを支えていますが、保守費用の高騰や仕様書の消失、技術者の高齢化により、システムの全容を把握できない状態が広がっています。特に、富士通メインフレームの保守サポート終了が発表されており、システム刷新の必要性が高まっています。
第二に、ベテランエンジニアの引退と知識継承の断絶です。長年システムを支えてきたエンジニアの大量退職が進む中、彼らが持つ「暗黙知」をいかに組織の財産として継承するかが、企業の事業継続性を左右する喫緊の課題となっています。
第三に、DXツール導入後の「定着不全」問題です。企業のDX投資は拡大しているものの、導入したシステムやSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)が現場に定着せず、期待される投資対効果(ROI)が得られないケースが顕在化しています。ツールを導入するだけでなく、「使いこなす」ための仕組みが求められています。
これらの危機が重なる状況において、東京システムハウスが打ち出す一連の戦略的パートナーシップと新サービスが注目されています。
東京システムハウスが推進するDX戦略
「AI駆動開発コンソーシアム」共同設立と「AIベテランエンジニア」
2025年10月、東京システムハウスは、生成AI(人工知能)を全面的に活用する新たなシステム開発手法「AI駆動開発」の普及促進を目指し、「AI駆動開発コンソーシアム」を共同設立しました。この取り組みを主導するのは、COBOLコンソーシアム会長も兼任する事業部長の比毛寛之氏です。
コンソーシアム設立の背景には、AI駆動開発をエンタープライズ領域へ広げるためには、企業の枠を超えた知見共有とコラボレーションが不可欠であるという認識があります。この取り組みの核となるのが、2025年5月にリリースされた「AIベテランエンジニア」です。このシステムは、COBOLのソースコードを基に自動で仕様書を作成し、退職するベテラン技術者の知識をAIが継承します。チャット形式での質問応答機能により、システム内容の把握が困難な状況を改善します。
エクサとの戦略的協業によるメインフレームモダナイゼーション
2025年10月には、株式会社エクサとの戦略的協業を開始しました。富士通メインフレームの保守サポート終了が迫る中、多くの企業がシステム刷新を迫られています。エクサが提供する「メインフレーム互換Javaフレームワーク」と、東京システムハウスが持つ「opensource COBOL 4J」によるCOBOLからJavaへのリライト技術を組み合わせることで、既存アプリケーションに蓄積された業務知見を最新のIT環境へ継承しながら、低コストかつ低リスクでのモダナイゼーション(近代化)を実現します。
WalkMe認定パートナー取得でDXツールの定着を支援
2025年12月、東京システムハウスはデジタルアダプションプラットフォーム(DAP)のWalkMe社と業務提携を締結し、認定パートナーとなりました。WalkMeは世界1,600社以上で採用されており、SAPやSalesforceなどの主要業務アプリケーションと連携し、ユーザーの定着を支援するプラットフォームです。この提携により、東京システムハウスはシステム構築だけでなく、導入後の「定着フェーズ」に特化した新たなDX支援サービスを展開。すでに国内大手製造業を中心に、WalkMeを活用したユーザーガイドやオンボーディング施策を提供し、システム利用率の向上や教育コスト削減を支援しています。
Blue Prism「Gold Implementation Partner」認定で自動化を推進
2026年2月には、SS&C Blue Prism社の「Gold Implementation Partner」に認定されました。2019年から提供してきたBlue Prismの導入・運用支援サービスが、この認定を受けたことは、東京システムハウスの技術力と顧客満足度の高さを裏付けるものです。金融・保険機関を中心とした実績と、多数の認定エンジニアが在籍する体制により、高い信頼性と統制が求められる業務領域においても確かな価値を提供しています。
北村氏が手掛けたゴルフ場DXの成功
一方、北村悟志氏が率いるゴルフシステムサービス部では、ゴルフ業界における「伝統と革新」が成果を上げています。特に成功を収めたのが、ゴルフ場レストラン向けのタブレット・スマホオーダーシステムです。他社に先駆けて完全クラウド版として開発され、導入しやすく安価な価格設定が奏功し、100ユーザー以上の獲得に成功しました。このシステムは、ゴルフ場が委託するレストランとの直接契約も可能にし、ターゲット層の拡大にも貢献しています。専門領域に特化した継続的なプロダクト開発が、競争優位の源泉となっています。
互いを高め合う同志と企業文化
1998年入社の北村氏と1999年入社の比毛氏。異なる事業部に所属しながらも、互いへの深い尊敬と信頼が、両者の挑戦を支えています。
マネジメントにおいても、両者には共通する哲学があります。北村氏は若手に「成功体験をさせる」ことに注力し、自立を促すことで自信をつけさせ、次の仕事へと繋げています。比毛氏は「成長実感を持たせる」ことを重視し、定期的な対面での目標管理やフィードバックを通じて、若手社員の成長を可視化しています。
また、両氏が口を揃えて語るのは、東京システムハウスの「従業員満足なくして顧客満足なし」という企業文化です。代表が利益を社員に還元する方針や、家族イベント、オフィス移転といった施策を通じて、従業員を最優先する姿勢が示されています。週末には役員と幹部社員による中長期計画の合宿も定期的に実施され、深夜まで議論を交わす文化が、同社の原動力となっています。
それぞれが描く未来
比毛氏の夢は、自社製品やソリューションの海外展開です。COBOLシステムの課題は欧州や米国にも存在しており、AI駆動開発コンソーシアムや各社との協業は、グローバル展開への布石と位置付けられています。一方、北村氏は日本のゴルフ文化を守り育てることに情熱を注ぎ、「ゴルフ場が利益を上げられる仕組みを提供し、ゴルファーが増えること」を目指しています。50歳を迎えた今も、「一生ゴルフの仕事を続ける」という決意は揺るぎません。
SAJが設立40周年を迎える中、東京システムハウスの取り組みは、「レガシー企業」から「DXの総合支援企業」への進化を示しています。ゴルフという伝統文化とCOBOLという古い技術。一見すると「古いもの」に向き合っているように見えますが、最先端の技術と新しい価値を生み出し続ける両氏の挑戦は、ソフトウェア産業の未来像と確かな方向性で繋がっています。
関連リンク
-
インタビュー記事全文: https://www.saj.or.jp/40th_branding/heroes_tsh
-
本企画のインタビュー記事一覧: https://www.saj.or.jp/40th_branding
-
SAJ 40周年記念サイト: https://40th.saj.or.jp/
-
一般社団法人ソフトウェア協会(SAJ): https://www.saj.or.jp/
-
東京システムハウス株式会社 公式サイト: https://www.tsh-world.co.jp/
AI Workstyle Lab編集部コメント
東京システムハウスの事例は、多くの日本企業が直面するDX課題に対し、具体的な解決策と実践的なアプローチを示唆しています。特に、COBOLなどのレガシー技術をAI駆動開発でモダナイズする「AIベテランエンジニア」や、WalkMeを活用したDXツールの「定着支援」は、投資対効果の最大化を目指す企業にとって非常に参考になるでしょう。古い資産を捨て去るのではなく、最新技術で再活性化させる視点は、既存事業を抱える企業がDXを推進する上で不可欠です。これらの取り組みが、いかに事業変革と競争力強化に繋がるか、今後の展開に期待が持てます。
「AIニュースは追っているけど、何から学べばいいか分からない…」 そんな初心者向けに、編集部が本当におすすめできる無料AIセミナーを厳選しました。
- 完全無料で参加できるAIセミナーだけを厳選
- ChatGPT・Geminiを基礎から体系的に学べる
- 比較しやすく、あなたに合う講座が一目で分かる
ChatGPTなどの生成AIを使いこなして、仕事・収入・時間の安定につながるスキルを身につけませんか?
AI Workstyle LabのAIニュースをチェックしているあなたは、すでに一歩リードしている側です。あとは、 実務で使える生成AIスキルを身につければ、「知っている」から「成果を出せる」状態へ一気に飛べます。
講師:栗須俊勝(AI総研)
30社以上にAI研修・業務効率化支援を提供。“大阪の生成AIハカセ”として企業DXを牽引しています。
- 日々の業務を30〜70%時短する、実務直結の生成AI活用法を体系的に学べる
- 副業・本業どちらにも活かせる、AI時代の「稼ぐためのスキルセット」を習得
- 文章・画像・資料作成など、仕事も趣味もラクになる汎用的なAIスキルが身につく
ニュースを読むだけで終わらせず、
「明日から成果が変わるAIスキル」を一緒に身につけましょう。
本記事は、各社の公式発表および公開情報を基に、AI Workstyle Lab編集部が 事実確認・再構成を行い作成しています。一次情報の内容は編集部にて確認し、 CoWriter(AI自動生成システム)で速報性を高めつつ、最終的な編集プロセスを経て公開しています。

