アラヤが「Persona Lab」を発足、人格情報を持つデジタルツインで次世代の消費者理解と未来予測を目指す

株式会社アラヤは、デジタルツインに「行動・生体データ」を融合し、次世代AIによる高精度な未来予測の実現を目指す「Persona Lab（ペルソナラボ）」を発足させたことを発表しました。この取り組みでは、大規模言語モデル（LLM）の内部表現を脳科学の手法で解析するアプローチ（AIを脳科学する）の基礎研究や事業活用への応用を目指しています。

Persona Lab（ペルソナラボ）とは

Persona Labでは、アラヤ独自の人格情報を取り込んだNeuroAI技術を提供し、研究開発、製品開発、社会調査などを支援します。特に、心理学・認知科学に根差した科学的プロジェクト設計、人格情報を利用したAIの学習、デジタルツイン（現実の人や物をデジタル空間に再現する技術）を利用したナラティブ分析、AI内部の可視化によってこれまで見えてこなかった人やAIの思考過程を解き明かし、適切な施策の実施をサポートするとのことです。

Persona Lab（ペルソナラボ）紹介ページ

AI Workstyle Lab編集部より

「デジタルツイン」とは、現実の世界の情報をデジタル空間に再現する技術であり、これによりシミュレーションや分析が可能になります。Persona Labでは、このデジタルツインに個人の人格情報まで組み込むことで、より詳細な人間行動の予測を目指している点が注目されます。これは、データに基づいた意思決定をさらに高度化する可能性を秘めています。

発足の背景と社会的な意義

企業のマーケティング活動や製品開発において、消費者理解の深化は長年の課題でした。従来の市場調査では、アンケートやインタビューによって消費者の「声」を集めてきましたが、時間とコストがかかる上に、サンプル数の制約から十分な多様性を確保することが困難でした。また、消費者自身も気づいていない潜在的なニーズや、「なぜそう考えるのか」という深層心理までは捉えきれないという限界がありました。

一方、AI技術の急速な発展により、データに基づく意思決定が可能になってきましたが、現状のAIの多くは過去の行動データや購買履歴に依存しており、「その行動の背景にある心理」や「まだ顕在化していない将来のニーズ」を予測することは困難でした。

こうした課題に対し、Persona Labは生成AIを活用して個人の人格情報（性格、価値観、ライフスタイル）を取り込んだデジタルツインを作成することで、以下のような革新的な価値を提供します。

マーケティング・製品開発領域
- 大規模な消費者調査を短時間・低コストで実施できます。
- 多様なターゲット層の深層心理やインサイトを瞬時に獲得できます。
- 新製品やサービスの市場反応をデジタル上でシミュレーションできます。
ヘルスケア・パーソナルサポート領域
- 一人ひとりの性格や価値観に合わせた最適な行動変容プログラムの設計が可能です。
- 継続可能な健康習慣形成のサポートが期待できます。
社会政策・都市計画領域
- 大規模な社会実験をデジタルツイン上で実施し、政策のリスクや効果を事前に検証できます。
- 多様な市民の反応を踏まえた、より受け入れられやすい施策の立案に貢献します。

AI Workstyle Lab編集部より

このアプローチは、ビジネスにおける意思決定プロセスを大きく変える可能性を秘めています。例えば、新商品の企画段階でデジタルツインを活用すれば、実際に市場に出す前に多様な顧客層からの反応を予測し、改善点を洗い出すことができます。これにより、開発コストの削減や成功確率の向上が期待できるでしょう。

「Persona Lab」の具体的な取り組み

現在、Persona Labでは以下のような技術開発を進めています。

Persona Lens（ペルソナレンズ）：100万人規模のデジタルツインによる社会調査シミュレーター
Persona Interview（ペルソナインタビュー）：デジタルツインとの対話でインサイトを獲得するインタビューシステム

これらのツールを活用し、研究開発、製品開発、社会調査などの支援を行っていく方針です。Persona Labは、これらの幅広い分野において人間の可能性を最大限に引き出すインフラとなることを目指しています。

AI Workstyle Lab編集部より

「Persona Lens」や「Persona Interview」といった具体的なツールが開発されている点も注目です。これにより、これまで感覚的に行われていた消費者理解が、データに基づいたより科学的なアプローチへと進化する可能性があります。AIを活用した市場調査は、マーケターにとって強力な武器となるでしょう。

Persona Labリーダーからのメッセージ

Persona Lab リーダーの濱田太陽氏は、これまでの人間の思考・感情・暗黙知を解き明かすというテーマに挑んできたと述べています。特に、大規模言語モデル（LLM）の内部表現を脳科学の手法で解析するアプローチ（AIを脳科学する）は、世界でも類を見ない研究開発であり、Persona Labではこの研究開発をさらに拡大させ、事業連携を進めていくと強調しています。濱田氏は、この最先端のブレイクスルーを通じて未来を創造することに情熱を注いでおり、今後の挑戦に期待を寄せています。

Persona Lab（ペルソナラボ）紹介ページ

＜Persona Lab リーダー紹介＞
濱田太陽 Ph.D.
沖縄科学技術大学院大学(OIST)科学技術研究科博士課程を修了。2022年より、Moonshot R&Dプログラム (目標9)「逆境の中でも前向きに生きられる社会の実現」(山田PMグループ)のPIとして前向き状態に関するモデル化に従事しています。研究テーマは、好奇心の神経計算メカニズムの解明やLLMによるデジタルツインです。

アラヤのPersona Labは、人格情報を持つデジタルツインを基盤として、次世代の消費者理解と未来予測を実現することで、多様な分野に革新をもたらす可能性を秘めています。今後の展開に注目が集まります。