高市政権の経済政策、企業の75.7%が「期待」
2025年10月21日に発足した高市早苗新政権が掲げる経済関連政策について、株式会社帝国データバンクが企業へのアンケート調査を実施しました。その結果、日本経済への効果を期待する企業が75.7%に上り、4社に3社が新政権の政策に期待を寄せていることが明らかになりました。
企業の4社に3社が新政権の経済政策に期待
高市政権が掲げる経済政策全般について、「期待している」と回答した企業は75.7%に達しました。一方、「どちらともいえない」は18.4%、「期待していない」は5.6%でした。
企業からは、「日本経済が停滞しているなか、積極財政や日本の強みを生かす戦略が必要だと考えられ、それを意欲的に打ち出している新政権に期待」（教育サービス）といった声や、「新政権の実行力とスピードに対して大いに期待している」（専門商品小売）といった、迅速な政策遂行への期待が寄せられています。また、「経済を強くする、日本を復権させる意欲が強く感じられる」（鉄鋼・非鉄・鉱業）といった評価もみられました。
一方で、「AI活用による人手不足解消に期待するが、事業実施にあたり、予算をどうするかが問題と考えている」（メンテナンス・警備・検査）など、財源面への懸念も示されています。
注目の経済政策への期待、「ガソリン等暫定税率廃止」は8割超、「年収の壁引き上げ」は6割超
特に注目される経済政策として、「ガソリン税・軽油引取税の暫定税率の廃止」と「“年収の壁”引き上げ」についても調査が行われました。
「ガソリン税・軽油引取税の暫定税率の廃止」を「期待している」企業は82.1%と8割超に上ります。企業からは、「暫定税率が廃止されれば、すべての層が平等に恩恵を受けることになり、経済全体にとって好ましい方向へ進むと考えられる」（放送）や、「輸送コストが下がることで、ものづくり分野における仕入価格の高騰をある程度抑えられるのではないか」（機械製造）といった声が聞かれます。
しかし、「政策としては良いが、代替財源が示されていないのがとても気になる」（情報サービス）のように、財源確保に対する懸念もあがっています。
次に、「“年収の壁”引き上げ」を「期待している」企業は65.1%でした。この政策では「どちらともいえない」が27.6%と約3割を占めています。「期待している」企業からは「年収の壁の引き上げは、早急に実施してほしい。当社のパート従業員も最低賃金の引き上げの影響で、扶養の範囲内に収めるために勤務時間を短縮しているが、こうした対応は現状にそぐわないと考えている」（機械・器具卸売）といったコメントが寄せられました。
一方で、「所得税の年収の壁を引き上げても、“社会保険の壁”や“住民税の壁”についても手当てしなければ、課題の解消にはつながらない」（自動車・同部品小売）のように、制度全体の見直しを求める声も聞かれます。
17の戦略分野への期待、「AI・半導体」が約7割でトップ
政府が「危機管理投資」と「成長投資」による強い経済の実現のため決定した17の戦略分野への重点投資方針において、日本経済に特にプラスになると期待する分野が調査されました。その結果、「AI・半導体」が69.2%で最高となりました。
AI Workstyle Lab編集部では、この結果は現代のビジネス環境において、AI（人工知能）と半導体が産業の効率化や革新に不可欠な基盤技術として認識されていることを示していると分析しています。AIはデータ分析、自動化、顧客体験の向上など、多岐にわたる業務で活用されており、その導入は企業の競争力強化に直結します。半導体はAIを動かすハードウェアの心臓部であり、かつて世界を席巻した日本製の半導体への期待は、デジタル産業の基盤強化への強い願いが込められていると言えるでしょう。AIを活用することで、人手不足の解消や新たなサービス開発の可能性が広がります。読者の皆様も、自社の業務にAIをどのように組み込めるか、この機会に検討されてはいかがでしょうか。
次いで、「防災・国土強靱化」（53.9%）が5割超、「デジタル・サイバーセキュリティ」（48.2%）、「資源・エネルギー安全保障・GX」（46.4%）などリスク対策分野が4割台後半で続きました。また、「情報通信」（42.8%）および「量子」（40.1%）といった、デジタル基盤と次世代の基盤技術を担う分野も上位に並んでいます。さらに、地政学的リスクの高まりを背景に、「防衛産業」（37.2%）は4割近くとなりました。
一方で、「フードテック」（23.9%）や「港湾ロジスティクス」（23.7%）、「海洋」（22.8%）など、ある程度業界が限定される分野や、現時点での注目度が比較的低い分野、そして実用化まで時間を要すると考えられる「フュージョンエネルギー（核融合）」（20.9%）は2割台にとどまりました。
まとめ
今回のアンケート結果から、高市政権が掲げる経済政策による日本経済への効果を期待する企業が75.7%に上ることが分かりました。「責任ある積極財政」への評価に加え、政権の論理的で分かりやすい施策提示や、高い意欲とスピード感を伴う実行力によって、停滞打破への期待感が強まっています。しかし、財源確保や財政規律を懸念する意見も聞かれました。
特に注目度が高い「ガソリン税・軽油引取税の暫定税率の廃止」には8割超の企業が期待を寄せ、幅広い経済効果を見込む声がありました。また、「“年収の壁”引き上げ」に対しても6割を超え、働き手の収入増や人手不足の解消効果を見込む企業が多かった一方で、社会保険の壁に関する考慮など制度全体の見直しを求める声も聞かれます。
17の戦略分野では、「AI・半導体」が約7割でトップとなり、デジタル技術への期待の高さがうかがえます。また、「防災・国土強靱化」、「デジタル・サイバーセキュリティ」、「資源・エネルギー安全保障・GX」といったリスク対策分野も上位にランクインしており、不確実性への備えを重視する企業姿勢が鮮明になりました。
新政権には、評価されている高いスピード感と実行力を生かし、不確実性への備えを強化しながら経済を活性化させる有効な政策を迅速に実施することが求められます。短期的対応にとどまらず、日本の強みを活用し、中長期的な視点で景気の好循環を生み出す環境を整え、持続的な成長を実現することへの期待が一層高まっています。
