InfiniCloud株式会社(以下 InfiniCloud)とさくらインターネット株式会社(以下 さくらインターネット)は、このたび国内完結型の生成AI業務支援サービス「さくらのAIソリューション」において、InfiniCloudが開発・提供するAI技術「InfiniCloud® AI」の提供に向け、基本合意を締結したことを発表しました。
この協業を通じて、「InfiniCloud® AI」は「さくらのAIソリューション」にパッケージ化され、企業向けに外部に情報が漏洩しない閉域網(外部ネットワークと遮断された専用の通信環境)に対応した、高セキュリティかつ高性能なPrivate AI環境が本格的に展開されます。
協業の背景:企業が求める「真に業務に特化し、機密情報を守るAI」
近年、生成AIの業務活用が急速に進む一方で、多くの企業では、機密情報や社内ナレッジ(知識やノウハウ)を外部のパブリッククラウド(不特定多数のユーザーが利用するクラウドサービス)に預けることへのセキュリティ上の懸念や、汎用的なPublic AI(一般的な公開AI)では特定の業務ドメイン(専門分野)に最適化しづらいという課題に直面しています。
「InfiniCloud® AI」は、このような課題に対し、「学習する」自社専用AIを最小限の構成から導入できる国産のPrivate AI基盤として設計されています。本協業では、InfiniCloudのPrivate AI技術を、さくらインターネットが国内データセンターで提供する強固なクラウドインフラ(生成AI向けクラウドサービス「高火力」を基盤とするGPU専有環境)上で提供することで、両社の強みを統合したソリューションが実現されます。
「InfiniCloud® AI」の主な特長
「InfiniCloud® AI」は、さくらのAIソリューションの安全で高性能なGPU(画像処理装置)を専有する生成AI向けクラウドサービス「高火力」を基盤とし、既存情報を知恵に変え、すべての従業員が簡単にAIを活用し、業務効率化を実現するために開発されました。本サービスが提供する主な特長は以下の3点です。
1. 企業の知識を守り、知恵を育む「Private AI基盤」
「InfiniCloud® AI」は、データが完全に隔離された国内独自のPrivate AI基盤です。外部AIと接続しないため、機密情報や個人情報、特許情報など秘匿性の高い情報も安心して投入し、活用できます。社内に蓄積されたナレッジを学習(ファインチューン:特定の目的に合わせてAIモデルを調整すること)させることで、組織固有の課題解決に特化し、従業員のように自律的に成長する「AI社員」を育成することが可能です。これにより、全従業員が利用できる、セキュアで専門性の高い知能を社内に構築し、業務効率化と情報資産の最大活用を同時に実現します。

AI Workstyle Lab編集部からの解説
企業にとって、機密情報の取り扱いはAI導入における最大の懸念事項の一つです。「Private AI基盤」は、この課題を根本的に解決するアプローチと言えるでしょう。外部に情報が漏洩するリスクがないため、企業は安心して自社の貴重なデータをAIに学習させ、業務に特化した「AI社員」を育成できます。これにより、個別の業務プロセスに最適化されたAIが、従業員の生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。特に、社内マニュアルや過去の成功事例といったナレッジを学習させることで、企業独自の強みを活かしたAI活用が期待できます。
2. 既存の資産を活かし、誰もが即座に使い始められる導入の容易さ
導入コストと学習コストを最小限に抑え、短期間でのAI活用を可能にします。社内マニュアル、PDF、Word文書、URLなど、既存の多様なドキュメントをそのままAIの学習リソースとしてインポート可能です。また、使い慣れたチャット形式の簡易なWebインターフェースを採用し、わずか3ステップの簡単な手順で、専門知識のない従業員でもすぐにAIの推論(AIがデータから結論を導き出すこと)を使い始められます。これにより、全社的なAI導入・利用を促進します。
AI Workstyle Lab編集部からの解説
AI導入におけるもう一つの障壁は、その複雑さや専門知識の要求度です。しかし、既存のドキュメントをそのまま学習リソースとして活用でき、かつ簡単なチャット形式で利用できる点は、多くの企業にとって大きなメリットとなります。IT部門の負担を軽減しつつ、現場の従業員が直感的にAIを使える環境が整うことで、AI活用の裾野が広がり、企業全体のデジタル変革が加速するでしょう。専門知識がなくてもAIを業務に組み込めることは、AI時代における新しい働き方を実現する上で非常に重要です。
3. 長年のエンタープライズインフラ技術と最先端AI技術の融合
InfiniCloud社が長年培ってきた、負荷分散(システムへのアクセスを適切に振り分ける技術)、リソース制御(システム資源の利用を最適化する技術)、コンテナ技術(アプリケーションとその実行環境をまとめてパッケージ化する技術)といった高度な基盤インフラ技術力がサービスの信頼性を裏打ちしています。最先端のLLM(大規模言語モデル)を日本の社会人常識を備えるよう独自にファインチューンし、さらに近傍検索、評価、ライティングを担う高性能な「データパイプライン」(データを効率的に処理する仕組み)を搭載しています。単なる技術検証ではなく、エンタープライズ(大企業)の「プロダクション環境」(実際にサービスを稼働させる本番環境)で安定的に、かつ確実に動作することに徹底的に拘った、開発者にやさしいPrivate LLMaaS(LLMをサービスとして提供する形態)を提供します。さらにOpenAI互換API(OpenAIの提供するAIサービスと互換性のある接続インターフェース)を提供しているため、既存のシステムへの組み込みもスムーズに実現できます。
両社からのコメント
InfiniCloud株式会社 代表取締役CEO 瀧 康史氏
「さくらのAIソリューション」に「InfiniCloud® AI」が仲間入りすることに、深い意義と喜び、期待を感じています。「InfiniCloud® AI」はAIのオーケストレーション製品であり、様々なAI技術を取り込み進化します。近い将来、全てのSaaS/アプリなどがAIを使い、インターネット、クラウドの次に、欠かせない情報インフラとなるでしょう。さくらインターネット株式会社との連携により、国内完結した日本の「智」を生みだし、実践投入できるAI技術と、日本のデータ主権、産業の発展に貢献して参ります。
さくらインターネット株式会社 執行役員 霜田 純氏
このたびのInfiniCloud様との連携により、「さくらのAIソリューション」から「InfiniCloud® AI」を提供できることを大変嬉しく思います。さくらインターネットが展開する国内完結型のインフラや共創の取り組みをさらに発展させ、生成AIの利活用がより多くの企業や地方自治体へ広がることを期待しています。今後も、同社と協力し、AI技術の実践的な活用を推進することで、国内における技術循環と産業発展に貢献してまいります。
関連リンク
まとめ
今回のInfiniCloudとさくらインターネットの協業は、国内企業が抱えるAI導入の課題に対し、具体的な解決策を提示するものです。高セキュリティな閉域網でのPrivate AI基盤提供は、機密情報を扱う多くの企業にとって大きな安心材料となります。また、導入の容易さや日本の社会常識に合わせたLLMのファインチューニングは、AIの社会実装をさらに加速させることでしょう。AI Workstyle Lab編集部としても、本協業が日本企業の競争力強化と、より安全で効率的なAI活用を推進していくことに期待しています。

