台湾の機械業界専門誌「ワイズ機械業界ジャーナル」の2025年10月第5週号が発行され、AI商機が台湾の運搬機械設備産業に大きな影響を与えていることが明らかになりました。特に自動化倉庫設備は前年比85%増を記録し、産業全体の成長を牽引しています。

AI商機が運搬機械設備需要を拡大
2025年1月から7月にかけて、台湾の運搬機械設備製造業の販売額は前年比18.8%増の353億元に達しました。この成長の背景には、AI産業における工場自動化や半導体分野でのOHT(天井走行式無人搬送システム)需要の急増があります。OHTシステムは、工場や倉庫の天井に設置されたレールを走行し、資材や製品を自動で搬送する効率的なシステムです。特に自動化倉庫設備は同85.8%増と、この分野の成長を強く牽引しています。
また、老朽化した住宅の建て替え需要により、エレベーター市場も26.5%増と堅調な国内需要を見せています。
光通信モジュールがAIサーバー向けに大量受注
米オラクルのAIデータセンター向けに光通信モジュールを共同生産している聯鈞光電と傘下の源傑科技は、大きな成長を遂げています。国立中央大学が開発したMEMSミラー技術(微小な機械構造と電子回路を組み合わせた技術を用いたミラーで、光の方向を高速かつ高精度に制御できます)により高精度な通信を実現し、2024年の売上高は前年比60倍の20億元に急伸しました。今後は1.6T通信やCPO(コパッケージド・オプティクス:光通信モジュールをCPUやGPUなどの半導体チップと同一パッケージ内に集積する技術で、データ転送速度の向上と省電力化が期待されます)対応製品の開発を進め、次世代高速通信市場での展開を目指しています。
半導体検査設備メーカーの事業転換事例
漢民科技グループの漢民測試系統は、10年にわたる赤字から事業転換に成功しました。テスト装置の保守・モジュール開発を軸とし、2024年売上高は前年の約2倍、2025年上半期の純利益は前年同期比6.6倍に増加しています。冷却モジュールや薄膜型プローブカードといった高付加価値製品へのシフトが、成功の鍵となりました。
台湾ねじ産業の再編と高付加価値化
米国の鉄鋼・アルミ関税引き上げと台湾元高の影響を受け、高雄市のねじメーカーでは10社以上が倒産するなど、厳しい状況に直面しています。主要メーカーである世豊螺絲の受注は前年比20%減となり、中国勢との価格差は最大5割に拡大しています。各社は資産の現金化、高付加価値化、米国への依存からの市場分散を急ぐなど、生産体制の再編を進めています。
AI Workstyle Lab編集部からの解説
AI Workstyle Lab編集部では、今回の台湾の機械業界の動向から、AIがもたらす産業構造の変化とその対応策について、重要な示唆が得られると考えています。
台湾の運搬機械設備産業の成長は、AI技術の導入による工場自動化やデータセンター需要の拡大が、具体的な設備投資に直結していることを示しています。これは、AIが単なるソフトウェアの進化に留まらず、物理的なインフラや製造プロセス全体を革新する力を持っていることの表れです。特に自動化倉庫設備やOHTシステムの需要増は、AIによる効率化が物流や生産現場に不可欠な要素となっていることを物語っています。
また、聯鈞光電・源傑科技の事例は、AIサーバーの高性能化を支える光通信技術が、今後ますます重要になることを示唆しています。AIの処理能力向上には、それを支える高速・大容量のデータ通信が必須であり、この分野での技術革新は、AI技術のさらなる発展を後押しするでしょう。
漢民測試系統の事業転換は、市場の変化に対応し、高付加価値製品やサービスにシフトすることの重要性を浮き彫りにしています。AI時代においては、既存のビジネスモデルに固執せず、AIがもたらす新たなニーズを捉え、自社の強みを活かした変革を進めることが、企業の持続的な成長に繋がるでしょう。
台湾ねじ産業の再編は、グローバルな経済環境の変化が、伝統的な製造業に与える影響を示しています。このような状況下で、AIを活用した生産最適化、新素材の開発、あるいは顧客ニーズに合わせた高付加価値製品の開発などが、生き残りのための重要な戦略となるかもしれません。
これらの事例から、AIは多岐にわたる産業に影響を与え、新たなビジネスチャンスと同時に、変革への適応を強く求めていることが分かります。AIを仕事で活用するためには、このような産業全体の大きな流れを理解し、自社の事業にどのようにAIを取り入れ、進化させていくかを戦略的に考えることが不可欠です。
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