台湾南部で「AIシリコンバレー」構想が本格始動
台湾南部では、国家科学・技術委員会(NSTC)が推進する「大南方新矽谷(南部シリコンバレー)」計画が本格的に始動しています。この構想は、台南、高雄、嘉義、屏東の各地域に科学園区(サイエンスパーク:台湾政府が科学技術産業の発展を目的として設置した工業団地)を整備し、半導体やAI(人工知能)、スマート製造(IoTやAI、ビッグデータなどの先端技術を活用し、生産プロセス全体を最適化・自動化する製造システム)といった先端産業の一大クラスター(産業集積地)を形成することを目指しています。
特に、世界最大の半導体受託製造(ファウンドリー)企業であるTSMC(台湾積体電路製造)が、台南市で3ナノメートル製造プロセス工場、高雄市で2ナノメートル製造プロセス工場(半導体の回路線幅を示す単位で、数字が小さいほど高性能で電力効率の良い半導体を製造できます)の建設を進めており、嘉義県でもAI・先進封止技術(半導体チップを保護し、外部と接続するための技術で、複数のチップを効率的に積層・接続することで、性能向上や小型化を実現します)拠点の整備が進むなど、半導体産業の集積が加速しています。

AI Workstyle Lab編集部より
この「南部シリコンバレー」構想は、台湾がAI技術と半導体産業における世界的リーダーとしての地位をさらに強化する上で極めて重要です。AIの進化には高性能な半導体が不可欠であり、この地域での集積は、研究開発から製造までの一貫したエコシステムを構築し、新たなイノベーションを生み出す土壌となるでしょう。企業にとっては、最新のAI技術を活用した製品開発やサービス提供の機会が拡大し、競争力強化につながることが期待されます。
米国の軍用ドローン企業と台湾企業の連携強化
米国の軍用ドローン新興企業であるシールドAI、オーテリオン、スカイディオの3社が、台湾の航空宇宙開発公社(AIDC)や国家中山科学研究院、さらには中堅ドローンメーカーと相次いで提携を進めています。これらの提携では、AI制御システムやスウォーム飛行(複数のドローンが連携して自律的に飛行する技術)などの先端技術を活用し、防衛、災害対応、産業用といった多岐にわたる分野での協業が強化されています。この動きは、台湾がAIドローンの供給網における主要な拠点となる可能性を示唆しています。
AI Workstyle Lab編集部より
ドローン技術とAIの融合は、私たちの働き方や社会インフラに大きな変革をもたらす可能性を秘めています。例えば、災害現場での迅速な情報収集や、広大な施設の点検作業の自動化など、これまで人手では困難だった業務を効率化できます。AI Workstyle Labでは、このような先端技術がビジネスにどのように応用され、新たな価値を創造できるかに注目しています。
プラズマ装置メーカー暉盛科技がAI・HPC向けで成果を創出
IC基板・半導体向けプラズマ装置メーカーの暉盛科技(NEMSテック)は、AIやHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング:非常に高い計算能力を必要とするコンピューティング分野)向けのハイブリッド接合や、FOPLP(ファンアウト・パネルレベルパッケージ:半導体チップのパッケージング技術の一つで、より多くの入出力端子を確保し、高性能化・小型化を図ることを目的とします)向け装置で業績を回復させています。特に、ABF(Ajinomoto Build-up Film)基板やガラス基板用のエッチング装置(半導体製造工程で不要な部分を削り取る装置)では、日米の大手企業から受注を獲得しており、AIサーバーやデータセンター向けの需要増大を背景に、長期的な成長が見込まれています。
AI Workstyle Lab編集部より
AIやHPCの進化は、高性能な半導体とその製造を支える基盤技術に大きく依存しています。暉盛科技のようなプラズマ装置メーカーの技術革新は、AIシステムの処理能力向上に直結し、より高度なAIアプリケーションの開発を可能にします。これは、AIを活用したビジネスモデルを検討する企業にとって、技術的な可能性を広げる重要な要素となります。
台湾工作機械産業の輸出入動向
2025年1月から9月までの台湾工作機械輸出は15.2億ドルで、前年同期比6.4%減少しました。中国、トルコ、ドイツ向けが減少した一方で、インド、ベトナム、タイ向けは増加傾向を示しています。部品輸出はほぼ横ばいで推移しており、リニアスライダーやボールねじの需要は底堅い状況です。一方、輸入は日本、中国、ベルギーからの高性能機の導入により39.3%増加しており、国内設備投資の回復がうかがえます。
AI Workstyle Lab編集部より
工作機械産業は、スマート製造の中核をなす重要な分野です。高性能な工作機械の導入は、生産プロセスの自動化と効率化を促進し、AIを活用した品質管理や予知保全といったスマートファクトリーの実現に貢献します。国内設備投資の回復は、台湾製造業全体のデジタル変革への意欲を示すものと言えるでしょう。
台湾の機械業界専門誌「ワイズ機械業界ジャーナル」
これらの最新情報は、ワイズコンサルティング グループが発行する台湾機械業界専門誌「ワイズ機械業界ジャーナル」2025年11月第1週号に掲載されています。同誌は、半導体設備、電子材料・部品、工作機械、航空宇宙、自動化・ロボットなど、幅広い分野の業界トレンド、企業動向、統計資料、法改正情報を提供しています。

ワイズ機械業界ジャーナルの特徴
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日本語で台湾の機械業界情報を収集可能です。
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半導体設備、電子材料・部品、工作機械など、個々の分野の情報が満載です。
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業界トレンド、企業動向、統計資料、法改正情報など、多種多様な情報を提供しています。
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豊富な写真と図表、パソコンでの閲覧に配慮された横型の読みやすいPDF形式で提供されます。
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ホームページの記事データベースより、過去記事の検索が可能です。
詳細はこちらから確認できます。
会社概要
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会社名:ワイズコンサルティング グループ
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所在地:中華民国台北市襄陽路9號8F
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代表者:吉本康志
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設立:1996年11月
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事業内容:経営コンサルティング、人材トレーニング、日本語台湾経済ニュース・機械業界ジャーナル配信、市場調査・業界調査・顧客調査、クラウドサービスの販売
台湾の市場調査・リサーチに関するご相談・お問い合わせは、ワイズリサーチ(威志総研)まで。
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e-mail:research@ys-consulting.com
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TEL:+886-22381-9711(日本時間10:00〜19:00)
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AI Workstyle Lab編集部より
台湾の「AIシリコンバレー」構想は、半導体とAI技術の融合を加速させ、グローバルなサプライチェーンにおける台湾の重要性を一層高めるでしょう。このような動きは、AIをビジネスに活用しようとする企業にとって、新たなパートナーシップや技術動向を把握する上で非常に有益な情報となります。最新の技術動向を常にキャッチアップし、自社のAI戦略に活かすことが、今後のビジネス成功の鍵となるでしょう。

