カラクリ、東京大学・Upstageと連携し「AI for Science」領域へ本格参入 – 科学研究のDXを加速

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国産LLM(大規模言語モデル)開発企業のカラクリ株式会社は、文部科学省が推進する「AI for Science」(科学のためのAI)領域に本格参入すると発表しました。研究機関や企業の研究開発部門を対象に、AIソリューション事業を拡大していく方針です。

この本格参入の核となる取り組みとして、本日、東京大学大学院新領域創成科学研究科(岡田 眞人 教授)およびグローバルAIスタートアップであるUpstage AI 株式会社と共同で、科学研究支援プロジェクト「AI for Science」を始動したことを併せて発表されました。

カラクリ、AI実装力とLLM開発力を武器に「AI for Science」領域へ本格参入

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AI for Science領域への参入意義

現在の科学研究では、高度化に伴い、スピードと再現性が阻害される可能性のある課題に直面しています。

主な課題として、以下の2点が挙げられます。

  • データ活用の非効率性: 複雑なデータ解析や前処理に研究者の膨大な時間が費やされ、創造的思考への集中が妨げられています。
  • 暗黙知の壁(属人化): 個々の研究者の知識が組織資産として構造化・活用されないケースや、論文などの文献検索が熟練者の経験や勘に依存するケースが課題となっています。

カラクリは、これらの根本的な課題を打破するため、まずデータやナレッジ活用の非効率性に取り組み、将来的には暗黙知の壁の打破を目指していくとのことです。

AI Workstyle Lab編集部から見ても、データ活用における非効率性や暗黙知の課題は、多くの研究機関や企業が直面する共通の課題です。AIによるこれらの課題解決は、研究の効率化だけでなく、イノベーションの加速にも繋がるでしょう。

カラクリ独自の強み:LLMと実装力による課題解決

カラクリがこの領域で優位性を持つのは、「高性能LLMの開発力」と「現場起点のAI実装力」を両立させている点にあります。

技術的優位性

  • LLM活用実績に基づく「暗黙知の組織資産化」: カラクリは、LLMを利用してカスタマーサポート領域の複雑なナレッジ構造を解析・処理し、精度を大幅に向上させた実績を持っています。この技術は、研究文書に埋もれる専門知識の正確な抽出・活用に応用できる基盤となります。
  • AI実装による属人化の是正: 最適な実験条件の設定が熟練者の経験値に依存しがちだった研究組織に対し、AI解析ツールを構築し、属人化していた判断プロセスを是正した実績があります。これらの実績を活かし、データ駆動型の研究プロセス構築で実験成功率や開発スピードへの貢献を目指します。
  • 独自LLM開発力: 経済産業省・NEDOが推進する「GENIAC」に採択されており、国産LLMにおいてトップクラスの性能を誇るLLMシリーズ「KARKURI LM」を提供しています。国産初の「CUA(Computer-Using Agent)」(コンピュータを操作してタスクを実行するAIエージェント)を開発する高い技術力で、用途に応じたモデル開発も可能です。

AI Workstyle Lab編集部から見ても、高性能なAIモデルを開発する力と、それを実際の現場で活用できる形に実装する力は、AIを実用的なツールとしてビジネスや研究に組み込む上で非常に重要です。特に、属人化の解消は、組織全体の生産性向上に直結する大きなメリットと言えます。

東京大学・Upstage社との共同プロジェクト概要

今回の共同プロジェクトは、カラクリの本格展開の戦略的な第一歩として、生成AIを活用して科学的発見のプロセスを変革することを目的としています。

プロジェクトの背景:研究の加速を阻む「非テキスト情報」の課題

科学研究におけるデータは急速に増大・多様化していますが、現行の多くのシステムはグラフや図表などの非テキスト情報(非構造化データ)をうまく処理できず、データの品質評価が難しいという課題を抱えています。このギャップが、研究成果の分析・検証・共有の効率を妨げていました。

3者の役割と技術の融合

本協業では、3者の強みを融合し、この課題の解決に挑みます。

  • カラクリ株式会社: AI実装およびエンジニアリング技術によるソリューション提供を推進します。
  • 東京大学(岡田教授): 理論的知見と研究におけるリーダーシップを発揮します。
  • Upstage AI株式会社: 大規模言語モデル(LLM)およびDocument Parse技術を活用した高度な情報抽出と特徴解析を実現します。

高性能LLM「Syn Pro」の活用

本プロジェクトは、Upstageとカラクリが共同開発した、日本語性能で国内開発モデルとして第1位を獲得した高性能な日本語LLM「Syn Pro」の活用を目指します。

3者は連携し、AIを単なる計算ツールではなく、研究者の思考と推論を支援する科学的パートナーとして位置づける新しいアプローチを提示し、自動化・透明性・協働性を兼ね備えた新たなAI研究モデルの確立を目指します。また、成果については知的財産権の確保に向けて検討を進めていくとのことです。

AI Workstyle Lab編集部から見ても、非テキスト情報の解析は、科学研究だけでなく、ビジネスにおける報告書や契約書などの文書解析にも応用可能です。このプロジェクトの成果は、広範な産業領域におけるデータ活用のブレイクスルーに繋がる可能性を秘めています。

関係者からのコメント

東京大学 岡田教授のコメント

「AIは科学を変革する力を持っていますが、その前提となる”データの構造化”の重要性は、これまで十分に認識されてきませんでした。AI-Readyなデータ基盤を整えUpstageのDocument AIに加えて、同社とカラクリが日本国内で共同開発したLLM (Syn Pro) が社会に広く実装されることで、研究機関や民間企業が長年抱えてきた本質的な課題を解決できる可能性を強く感じています。さらに、ヘルスケアや製造業をはじめとする幅広い産業領域においても、この三者連携によるAIの取り組みが真の価値を発揮できる環境を築くことが、私の使命です。AI for Scienceの活用がまだ途上にある今こそ、この分野をリードする新たな世界を共に切り拓いていきたいと思います。」

Upstage AI株式会社、代表取締役 松下紘之さまのコメント

「カラクリ株式会社および東京大学とは、本プロジェクトのキックオフ以来、約半年にわたり、科学研究の現場におけるAI活用の可能性を共に探ってまいりました。今回、『AI for Science』の社会実装に向けて大きな一歩を踏み出せることを、大変うれしく思います。Upstageは、グローバル市場で培ってきたDocument Intelligence技術を軸に、非構造データをAIが理解できる形へと変換し、研究や業務における知識活用を支援してきました。さらに今年10月には、カラクリとの共同開発により、国内開発モデルとして最高水準の日本語性能を誇るLLM『SynPro』をリリースし、科学研究のデータ解析と知識構造化を『安心・安全な環境』と『高いコスト効率性』のもとで実現する新たな基盤を整えました。このプロジェクトチームが一体となって新たなシナジーを生み出すことで、AIが日本の科学研究、そしてその先の産業発展の可能性を大きく切り拓いていく未来を見据えて、その一つひとつの現場での価値創造を共に実現していきたいと考えています。」

各社の概要

Upstageについて

Upstageは、安全性と高性能を兼ね備えた生成AIソリューションを提供しており、AmazonおよびAMDからも出資を受けているグローバルAIスタートアップです。日本語に特化した次世代大規模言語モデルを新たにリリースし、高精度・高信頼なAIを日本の文脈に即して提供しています。保険、法律、医療といった規制産業のリーダー企業では、UpstageのAI技術を活用し、複雑で非構造的な文書を実用的なビジネス価値へと変換しています。

カラクリについて

カラクリは「FriendlyTechnology」というビジョンを掲げ、LLMと高度なAI実装力で、産業・研究領域におけるDXを推進するAIスタートアップです。設立当初より国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)との共同プロジェクトに参画し、2018年からはトランスフォーマーモデルであるBERTの研究を開始、2022年からはGPTを含む大規模言語モデルの研究に取り組んでいます。その技術を活かしたカスタマーサポート向けのSaaS事業で、高島屋、SBI証券、セブン-イレブン・ジャパン、星野リゾートなど、各業界のトップ企業に選ばれ続けています。

詳細については、以下のカラクリ株式会社のウェブサイトをご確認ください。

この記事の情報
記事の著者
AI Workstyle Lab 編集部

ChatGPTやAIツールを中心に、AI時代の「学び・働き方・キャリア」をアップデートする情報を発信。
AI Workstyle Labは、AIと共に進化する働き方を提案するメディアです。
AI Workstyle Lab編集部は、人間の編集者が監修し、150本以上の記事をChatGPT × 校正AIで制作しています。

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