台湾経済部産業発展署が「日台クロスドメイン協力プラットフォーム」を始動
台湾の経済部産業発展署は、世界的なテクノロジー競争が激化する中で、日本との産業連携をさらに強化するため、「日台クロスドメイン協力プラットフォーム」を始動しました。このプラットフォームは、人工知能（AI）とIoT（モノのインターネット）を核とし、日台間の地域産業連携を深めることを目的としています。
台湾政府の戦略と「AIアイランド」構想
台湾政府は、「五大信頼産業」政策を推進しており、その中で半導体、AI、IoTを中核的な発展分野と位置づけています。これは、台湾産業の国際競争力と地位を強化するための戦略です。
特に、政府は「AI産業化」（AI技術を製品やサービスに組み込むこと）と「産業AI化」（既存産業にAIを導入して効率化を図ること）という二本柱の戦略を掲げ、長期的ビジョンとして「AIアイランド」の構築を目指しています。
スマートエレクトロニクス産業発展推進計画（SIPO）の役割
台湾国内産業の発展を担う主要機関である経済部産業発展署（Industrial Development Administration, IDA）は、長年にわたり「スマートエレクトロニクス産業発展推進計画（SIPO）」を通じて、半導体・スマートエレクトロニクス産業の投資環境整備と技術革新を支援しています。また、国内外の交流イベントを開催することで、産業の川上から川下までの技術連携やクロスドメイン（異なる分野間）の交流を促進し、新たな応用分野や多様な協業モデルの創出を後押ししています。
日台協力の具体的な事例
台湾と日本の産業連携は特に密接です。SIPO計画の支援のもと、すでにいくつかの具体的な協力事例が生まれています。
- 2024年：海水養殖におけるIoTスマートセンシングソリューション
台湾の銘祥科技と日本の有名電子商社が提携し、海水養殖における水質・空気モニタリングのニーズに対応するIoTスマートセンシングソリューションを共同開発しました。この技術はすでに日本のシステムインテグレーター向けにサンプル導入され、顧客テスト段階に入っています。これは、台湾のセンサーおよびチップ統合技術の優位性を示すとともに、日本の地域における革新的な応用実現に貢献しています。 - 2023年：新世代ワイヤレス聴診器の開発
台湾の科音国際と日本の医療技術企業がSIPO計画の支援を受け、新世代のワイヤレス聴診器を共同開発し、数百台の製品を生産することに成功しました。この成果は、台湾と日本の医療IoT分野における協力の新たなモデルケースとなっています。
今後の展望とAI Workstyle Lab編集部の解説
今後、IDAはSIPO計画を通じて協力範囲をさらに拡大し、日本の地方自治体、業界団体、企業とのパートナーシップを深化させることで、半導体、AI、IoT、および新興応用分野における台湾・日本双方の互恵的な成果創出を一層推進していく方針です。
AI Workstyle Lab編集部の解説
今回の台湾経済部産業発展署による「日台クロスドメイン協力プラットフォーム」の始動は、日本の企業にとって大きなビジネスチャンスを秘めています。AIとIoTは、あらゆる産業のデジタルトランスフォーメーション（DX）を加速させる中核技術であり、台湾の優れた半導体・エレクトロニクス技術と日本のニーズが融合することで、これまでにない革新的なソリューションが生まれる可能性が高いです。
特に、上記で紹介された海水養殖におけるスマートセンシングや医療分野でのIoT活用は、特定の産業における具体的な課題解決にAIとIoTがどのように貢献できるかを示す好例と言えます。日本のビジネスパーソンは、自社の課題に対してAIやIoTをどのように活用できるか、また台湾企業との連携を通じて新たな価値を創出できないか、といった視点で情報収集を進めることが重要です。
このような国際的な技術連携の動きは、AIを仕事に活かす上でのヒントに満ちています。自社の業務プロセスを見直し、AIやIoTを導入することで、生産性向上や新規事業創出につながる機会を探してみてはいかがでしょうか。
