松尾研発スタートアップ「2WINS」とポールトゥウィンが共同開発:生成AIでE2Eテスト設計を完全自動化

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松尾研発スタートアップ「2WINS」とポールトゥウィンが共同開発:生成AIでE2Eテスト設計を完全自動化

東京大学発のAIスタートアップ企業である株式会社2WINS(以下「2WINS」)と、サービス・ライフサイクルの課題解決を支援するポールトゥウィン株式会社(以下「ポールトゥウィン」)は、生成AIを活用した完全自動型のE2Eテスト設計システムを共同で研究・開発し、ポールトゥウィンでの業務利用を開始したことを発表しました。

共同研究・開発の背景と目的

近年、ソフトウェア開発の現場では、アジャイル開発の加速や生成AIの普及により、テスト設計のスピードと精度の両立が新たな課題として浮上しています。従来の自動テストツールはテストの実行や結果分析に強みを持つ一方で、テスト設計そのものは依然として手作業に頼るケースが多く、人的負担や属人化が問題視されていました。

このような状況に対し、ゲームデバッグやソフトウェアテストで長年培われたノウハウを持つポールトゥウィンと、LLM(大規模言語モデル)をはじめとする基盤モデル技術やデータサイエンスに強みを持つ2WINSが協働。テスト設計工程の自動化を目指し、本システムの共同研究・開発を進めてきました。この取り組みにより、テストエンジニアがより戦略的かつ創造的なテスト活動に専念できる環境を提供することを目指しています。

AI Workstyle Lab編集部では、この共同開発がソフトウェア品質保証の分野に新たな変革をもたらすと見ています。テスト設計におけるAIの活用は、開発プロセスのボトルネック解消に大きく貢献する可能性を秘めているでしょう。

ここでいうE2Eテスト(End-to-Endテスト)とは、システム全体の流れをユーザー視点で検証するテストのことです。個々の機能ではなく、実際の業務フローや利用シナリオに沿ってシステム全体が正しく動作するかを確認する重要な工程を指します。

システム概要

生成AIによる自動テスト設計システムの特徴

本システムは、テスト設計の自動化と効率化を実現する複数の特徴を持っています。

① AIによるコード解析で動的にテスト設計を自動生成

対象システムのコードをAIが解析し、E2Eテストケースを自動的に生成します。シナリオ分岐や例外処理なども含め、テストカバレッジ(テストによってどれだけ網羅されているかを示す指標)を自動で最適化することが可能です。この機能は、従来のテスト設計で発生しがちだった見落としや属人化のリスクを軽減し、品質向上に直結するでしょう。

コード解析によるテスト設計自動生成

② 探索的テスト設計への対応

従来のスクリプト型テストだけでなく、探索的なテストパターン設計にも対応しています。AIが未知の動作や潜在的なリスクの検出を支援することで、より網羅的で深いテストが可能になります。これは、AIが人間の思考を補完し、より高度な品質保証を実現する具体的な事例と言えます。

③ 手動・自動テスト双方に対応する柔軟性

手動テスト向けの設計書生成と、自動テスト用スクリプト生成の両方に対応しており、既存のQA(品質保証)フローにシームレスに統合可能です。これにより、企業の現在の運用状況に合わせて段階的にAI導入を進めることができるため、導入障壁が低い点が特長です。

手動・自動テスト対応の柔軟性

技術的位置づけと優位性

このAIシステムは、既存のE2Eテスト自動設計ツールの多くが限定的なシナリオ生成にとどまる中で、システムコードの解析から探索的テスト設計までを完全自動化する点で独自の強みを持っています。また、一般的な自動テスト設計ツールの多くが各社独自プラットフォーム内での利用を前提としているのに対し、汎用的な自動テスト設計ツールとして実用化された点も大きな差別化要因です。

さらに、汎用的な生成AIモデル群における同一条件下でのテストケース自動生成数を比較した結果、他の生成AIモデルが数十件前後の出力にとどまるのに対し、本システムでは251件を自動生成しました。これは汎用モデルを大きく上回る成果であり、テスト設計に特化した独自のAIモデルが、より精緻かつ実用的なテスト設計を可能にする新しいアプローチを実現していることを示しています。

生成AIモデル比較

各社代表からのコメント

ポールトゥウィン株式会社VPoAIS兼先端技術研究室室長 久保雅之氏

ポールトゥウィン 久保氏

「本システムは、ポールトゥウィンが長年にわたり蓄積してきたテスト設計の知見と、最新の生成AI技術を融合させた成果です。私たちは、テスト工程における“思考の自動化”に挑戦し、人の経験や直感をAIが補完できる新しいテスト設計のあり方を目指しました。実際の業務利用においては、テスト設計から実行までのリードタイムが大幅に短縮され、テストケースの網羅性も向上しています。これにより、クライアントに提供する検証サービスの品質とスピードの両立が実現できつつあります。今後もAIを活用した効率化にとどまらず、テストエンジニアがより創造的な検証活動に集中できる環境づくりを進め、クライアントの開発現場に新たな価値を提供していきたいと考えています。」

株式会社2WINS 代表取締役CEO 小川 椋徹氏

2WINS 小川氏

「本協働は、AIがソフトウェア開発の中核工程に実装される新たな段階を示す取り組みです。ポールトゥウィン様の現場力と豊富な品質保証の知見、そして2WINSの最先端の生成AIやLLMを実用化する研究開発力・問題解決力を融合することで、テスト設計プロセスの革新的な自動化を実現しました。2WINSは、AIを“効率化の手段”にとどめず、“価値創造の基盤”として社会実装を進めてまいります。今後も、開発現場の生産性と創造性を飛躍させることを目指してまいります。」

株式会社2WINS 取締役CTO 王 凱氏

2WINS 王氏

「2WINSは、LLMをはじめとする生成AIにとどまらず、探索・最適化アルゴリズムを活用した提案にも強みを持っています。今回、当社のLLMおよび探索アルゴリズムに関する知見と、ポールトゥウィン様が有するテスト領域での豊富なドメイン知識を組み合わせることで、網羅性と汎用性に優れたテスト設計エージェントを開発しました。従来の手法が「広く浅い探索」を行うのに対し、私たちのエージェントは「深い探索」を得意としており、より複雑で多層的なテストシナリオにも柔軟に対応します。今後はテスト設計にとどまらず、テストコードの自動生成や補正までを視野に入れ、テストプロセス全体の効率化と高度化を目指してまいります。」

今後の展望

2WINSとポールトゥウィンは、今冬に本システムのテストコード生成および補正機能への対応を予定しています。これにより、AIがテスト設計だけでなく、テストコードの自動生成・自動補正までを一貫して実行できるようになり、テストプロセス全体の効率化がさらに進む見込みです。

本協働を通じて、ポールトゥウィンではテスト設計から実行までのリードタイム短縮や品質保証工程の最適化を実現し、クライアントに対してより高品質かつ迅速な検証サービスを提供していくとのことです。AI活用による生産性向上と品質強化の両立を図りながら、クライアントの開発現場に新たな価値を創出していく方針です。

AI Workstyle Lab編集部の視点

今回の共同開発は、AIが単なる補助ツールではなく、開発プロセスの核心である「思考」の部分に深く関与し、自動化と最適化を推進する可能性を示しています。特にテスト設計のような、人間の経験や直感が重要視される領域においてAIが実用的な成果を出したことは、AIのビジネス適用範囲がさらに広がっていることを意味するでしょう。今後、テストエンジニアの役割がより高度な戦略立案や創造的な問題解決へとシフトしていく中で、本システムがその変革を強力に後押しすることが期待されます。

関連情報

ポールトゥウィン株式会社について

ポールトゥウィン株式会社は、ゲームデバッグ・ソフトウェアテスト・ネットサポート事業など、ITサービスを主な事業とする会社です。1994年にゲームデバッグ事業を立ち上げ、現在はゲーム業界、EC業界を中心に、多様なクライアントの課題解決に取り組んでいます。培った知識とノウハウ、多様な人材を活かし、世の中のサービスやプロダクトの品質および価値向上に貢献しています。

株式会社2WINSについて

株式会社2WINSは、東京大学が位置する本郷を拠点とする東大発AIスタートアップです。東京大学大学院やインド工科大学等の出身研究者を中心とし、言語系AI・画像系AIを強みに、パートナー企業の経営課題に深く踏み込むソリューションを提供しています。AIベンダーとしてだけでなく、課題設定から運用まで一貫して伴走するパートナーとして、企業の成長を加速させています。2025年3月には東京大学「松尾研発スタートアップ®」に認定されました。

この記事の情報
記事の著者
AI Workstyle Lab 編集部

ChatGPTやAIツールを中心に、AI時代の「学び・働き方・キャリア」をアップデートする情報を発信。
AI Workstyle Labは、AIと共に進化する働き方を提案するメディアです。
AI Workstyle Lab編集部は、人間の編集者が監修し、150本以上の記事をChatGPT × 校正AIで制作しています。

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