TSMCが2026年にCPO量産へ──AIデータセンターの高速化・省電力化を推進する台湾の先端技術動向

ワイズコンサルティンググループは、台湾の機械業界専門誌「ワイズ機械業界ジャーナル」の2025年11月第2週号を発行しました。今号では、AIデータセンターの高速化と省電力化を実現するTSMCのコパッケージド・オプティクス（CPO）量産開始をメイントピックに、台湾製造業の技術革新と国際展開の現状が多角的に分析されています。

TSMC、2026年にCPO量産でAIデータセンターの進化を加速
台湾スタートアップがドローン用半導体で成果、防衛・自律飛行技術に貢献
鉅鋼機械、ローコード開発とAIで全社DXを成功
電子錠最大手・華豫寧、高付加価値戦略で欧米市場を開拓
ワイズ機械業界ジャーナルについて

TSMC、2026年にCPO量産でAIデータセンターの進化を加速

世界的な半導体メーカーであるTSMCは、2026年にシリコンフォトニクス技術を活用したCPO（Co-packaged Optics：光電融合技術の一種で、光通信モジュールと半導体チップを同一パッケージ内に統合し、データ伝送の高速化と消費電力の削減を目指す技術）の量産を開始する予定です。この革新的なパッケージ技術は、AIデータセンターの消費電力削減と高速伝送を両立させるものとして注目されています。

第2世代CPOでは、CoWoS（Chip on Wafer on Substrate：複数のチップを効率的に統合し、高性能化と小型化を両立させるTSMCの先進パッケージング技術）が統合され、電力効率が10倍、伝送遅延が20倍改善される見込みです。台湾政府は高雄にR&D拠点を設置し、29億台湾元を投じて供給網構築を推進しており、AI半導体時代の基盤技術として期待が高まっています。

AI Workstyle Lab編集部の解説

AIの進化に伴い、データセンターにおける処理能力と電力効率の向上は喫緊の課題となっています。TSMCのCPO技術は、AIモデルの学習や推論に必要な膨大なデータ処理を、より高速かつ低消費電力で実現するための重要なブレークスルーです。これは、AIを活用した新しいビジネスモデルやサービスの創出を加速させ、私たちの働き方にも大きな影響を与えるでしょう。データセンターのインフラが進化することで、より複雑なAIタスクをクラウド上で効率的に実行できるようになり、企業はAI導入の障壁を下げることが可能になります。

台湾スタートアップがドローン用半導体で成果、防衛・自律飛行技術に貢献

ドローン分野では、台湾のスタートアップ2社が半導体開発で注目すべき成果を上げています。天淵実業は暗闇でも対象を感知できる赤外線熱画像半導体を開発し、国内UAV（無人航空機）メーカーによるテストが開始されました。また、ターニング・ポイント・レーザーズ（TPL）は、AIDC（漢翔航空工業）、中科院と連携し、ドローン迎撃用8kWレーザー半導体を開発しました。

欧米の輸出規制を背景に、台湾発のドローン用半導体供給網の形成が進んでおり、国防・航空宇宙分野における台湾半導体産業への期待が高まっています。

AI Workstyle Lab編集部の解説

ドローン技術とAIの融合は、物流、インフラ点検、農業、そして防衛といった多岐にわたる分野で革新をもたらしています。特に、自律飛行や画像解析には高性能なAI半導体が不可欠です。台湾スタートアップによるこれらの開発は、ドローンの性能向上だけでなく、サプライチェーンの強靭化にも寄与します。AIを搭載したドローンは、人間がアクセス困難な場所での作業や、精密なデータ収集を可能にし、私たちの仕事の安全性と効率性を向上させる可能性を秘めています。

鉅鋼機械、ローコード開発とAIで全社DXを成功

スニーカー中底製造装置で世界シェア8割を誇る鉅鋼機械（キング・スチール・マシナリー）は、ローコード開発とAI導入により全社的なDX（デジタルトランスフォーメーション：企業がデータとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立すること）を実現しました。システムを単一プラットフォームに統合し、AI活用を義務化することで、プロジェクト期間を1か月から1週間に短縮し、若手人材の採用増と生産性向上を両立させています。製造現場のデジタル化モデル企業として注目を集めています。

AI Workstyle Lab編集部の解説

製造業におけるDXは、生産性向上と競争力強化の鍵です。鉅鋼機械の事例は、ローコード開発（プログラミング言語によるコード記述を最小限に抑え、視覚的なインターフェースやドラッグ＆ドロップ操作でアプリケーションを開発する手法）とAIの組み合わせが、いかに迅速かつ効果的に企業の変革を推進できるかを示しています。特に、AI活用を義務化することで、従業員のデジタルリテラシー向上とAI文化の醸成を促している点は注目に値します。これは、AIを組織全体で活用し、業務プロセスを最適化する上での好事例であり、日本企業にとっても大いに参考になるでしょう。

電子錠最大手・華豫寧、高付加価値戦略で欧米市場を開拓

電子錠ブランド「WAFERLOCK」を展開する華豫寧（WFEテクノロジー）は、防塵・防水・クラッチなどの独自特許技術を強みに、高品質住宅市場で受注を拡大しています。台湾新築住宅市場で過半のシェアを占め、粗利益率50％超を維持。AI対応電子錠の開発も進めており、11月末には株式店頭公開を計画しています。アジアの有力ブランドへの成長が期待されています。

AI Workstyle Lab編集部の解説

IoTデバイスとAIの連携は、スマートホームやスマートオフィスといった分野で新たな価値を創造しています。華豫寧のAI対応電子錠開発は、セキュリティと利便性を高めるだけでなく、将来的には個人の行動パターンを学習し、よりパーソナライズされたサービスを提供する可能性を秘めています。高付加価値戦略とAI技術の組み合わせは、伝統的な製造業が新しい市場を開拓し、国際競争力を高めるための有効な手段と言えるでしょう。

ワイズ機械業界ジャーナルについて

ワイズコンサルティンググループが発行する「ワイズ機械業界ジャーナル」は、台湾の機械業界に特化した日本語情報誌です。半導体設備、電子材料・部品、工作機械、機械設備、自動化・ロボット、再生エネルギーなど、多岐にわたる分野の業界トレンド、企業動向、統計資料、法改正情報を網羅しています。豊富な写真と図表を用いた読みやすいPDF形式で提供され、過去記事のデータベース検索も可能です。