アルゴリズム取引の信頼性を再定義：VeritasChain Protocol (VCP) v1.0が金融市場の透明性を確立

アルゴリズム取引の透明性を確立する「VeritasChain Protocol (VCP) v1.0」が正式公開
アルゴリズム取引の「ブラックボックス化」という課題
VCP v1.0が実現する「プロセスの監査」
- VCP v1.0の主な特徴
VCP Explorer API v1.1とVC-Certified認証制度
国際標準化への展望
- 関連リンク

アルゴリズム取引の透明性を確立する「VeritasChain Protocol (VCP) v1.0」が正式公開

VeritasChain Open, Regulator-Ready Audit Standard for AI & Algo Trading

2025年11月24日、VeritasChain Standards Organization（日本法人：VeritasChain株式会社）は、金融市場におけるアルゴリズム取引の信頼性を再定義する、世界初のアルゴリズム取引監査プロトコル「VeritasChain Protocol (VCP) v1.0」を正式に公開しました。このプロトコルは、取引データを暗号学的に検証可能とすることで、金融市場の透明性を高める次世代の監査規格です。

VCP v1.0は、EU AI法やMiFID IIといった国際的な規制に準拠した設計が特徴で、将来的には国際標準化機構（ISO）への提出を通じて、国際標準化が推進される予定です。VCPの正式公開と同時に、VCP準拠データの真正性を検証できる「VCP Explorer API v1.1」と、技術適合性を証明する公式認証制度「VeritasChain Certified (VC-Certified)」の受付も開始されています。

アルゴリズム取引の「ブラックボックス化」という課題

現代の金融市場では、AIやアルゴリズムが取引の意思決定を担うことが一般的です。しかし、その意思決定プロセスが「ブラックボックス化」し、内部の動作原理やプロセスが不明瞭になるという課題がありました。これにより、取引結果に至るまでの詳細なロジックやリスクパラメータが把握しづらくなり、EU AI法が求めるAIの透明性・説明責任や、MiFID IIが要求する厳格な記録保持といった規制要件を満たすことが困難でした。

AI Workstyle Lab編集部の解説

AIがビジネスの意思決定に深く関わる現代において、「なぜそのAIがその判断を下したのか」を明確にすることは、金融分野だけでなく、さまざまな産業で重要性を増しています。特に、監査やコンプライアンスが求められる領域では、AIの透明性確保は避けて通れない課題です。VCPのようなプロトコルは、AIの判断根拠を記録し検証可能にすることで、企業がAIをより信頼性高く活用するための基盤を提供すると考えられます。

VCP v1.0が実現する「プロセスの監査」

VCP v1.0は、アルゴリズム取引における意思決定から執行までの全プロセスを、不変形式で記録することを可能にします。これにより、従来の「結果の監査」から、より詳細な「プロセスの監査」へと転換することが実現されます。

VCP v1.0の主な特徴

暗号学的完全性と耐改ざん性: 高性能なデジタル署名技術であるEd25519と、データの改ざんを効率的に検出できるRFC 6962準拠のマークルツリー技術を採用しています。これにより、記録されたデータがハッシュチェーンで連結され、定期的にブロックチェーンなどの不変台帳に固定されることで、後からの改ざんが数学的に不可能であることを証明します。
規制準拠を考慮した設計: プロトコルレベルで主要な国際規制（EU AI法、MiFID II、GDPR）をサポートしています。AIの判断根拠を記録するVCP-GOVモジュール（Governance）や、取引時点のリスクパラメータを記録するVCP-RISKモジュール（Risk Management）により、説明責任の強化を図っています。
厳格な精度と数値表現: 高頻度取引（HFT）に対応するため、PTPv2によるナノ秒精度の時刻同期をサポートしています。また、浮動小数点誤差（コンピューターが実数を表現する際に生じる丸め誤差）を排除するため、すべての金融数値は文字列でエンコードするよう義務付けられており、絶対的な一貫性を確保しています。
将来にわたるセキュリティ（Crypto Agility）: 量子コンピューターの脅威に備え、現在の暗号標準から量子耐性暗号（PQC、例：DILITHIUM）へのシームレスな移行を可能にする設計（Crypto Agility）が採用されています。
包括的な対応と階層モデル: HFTからリテール取引（MT4/5）まで、幅広い環境を包括的にサポートするため、Platinum、Gold、Silverの3つのコンプライアンス階層が定義されています。

VCP Explorer API v1.1とVC-Certified認証制度

VCP v1.0の公開と同時に、第三者がVCP準拠データの真正性を直接検証できる「VCP Explorer API v1.1」がリリースされました。このAPIは「Merkle証明」機能を提供し、特定の取引イベントが改ざんされていないことを数学的に証明することで、「Verify, Don’t Trust（信頼するのではなく検証せよ）」という原則を実現します。

また、VCP仕様への技術適合性を公式に証明する唯一の制度として、「VeritasChain Certified (VC-Certified)」認証プログラムの受付が開始されました。VSOの自動適合性テストを経て発行されるこの認証は、ブローカー、取引所、プロップファームなどが自社のシステムの透明性と公平性を実証するための信頼の証となります。

国際標準化への展望

VeritasChain Standards Organization (VSO) は、VCPを金融市場の不可欠なインフラとして確立するため、FIX Trading Communityとの連携を深め、ISO/TC 68（金融サービス技術委員会）への提出を通じて、VCPの国際標準化を積極的に推進していく方針です。

AI Workstyle Lab編集部の解説

VCPのような国際標準の確立は、金融業界だけでなく、AIが関わるあらゆる分野でのデータ透明性と信頼性向上に寄与するでしょう。企業がAIシステムを導入・運用する際には、その意思決定プロセスが適切に記録・検証可能であるかどうかが、今後のコンプライアンス上、極めて重要になります。このような技術の進展は、AIの社会実装を加速させるとともに、より安全で倫理的なAIの活用を促すものとして注目されます。