アップグレード市村健太代表、「IF Con Tokyo 2025」で「コンテキストエンジニアリング」を講演

AI活用格差の現状と「コンテキストエンジニアリング」の必要性
- プロンプトエンジニアリングの限界と新たなアプローチ
- コンテキストエンジニアリングの構成要素と期待される効果
市村健太氏のコメント
株式会社アップグレードとDifyについて

AI活用格差の現状と「コンテキストエンジニアリング」の必要性

市村氏は講演の中で、生成AIの進化が加速する一方で、概念実証（PoC：Proof of Concept）止まりで終わる企業と、AIを業務に組み込み成果を出す企業との間で「AIの活用格差」が顕在化している現状を指摘しました。

AI Workstyle Lab編集部解説：
AIの導入を検討する多くの企業が、PoCの段階で費用対効果が見えにくくなったり、本格導入への障壁に直面したりすることがあります。この格差を埋めるためには、単に最新のAIツールを試すだけでなく、自社の業務プロセスにAIをどのように統合し、具体的な成果につなげるかという視点が不可欠です。

プロンプトエンジニアリングの限界と新たなアプローチ

講演では、AIの出力を引き出す上で重要な「プロンプトエンジニアリング」が、進化するAI Agentを業務で活用する際には限界があることが説明されました。プロンプトエンジニアリングは、AIへの指示（プロンプト）を最適化することで、一度の指示に対してより精度の高い回答を得る手法です。

しかし、自律的なAI Agent（自律的にタスクを実行するAI）の実現には、単なるプロンプトだけでなく、AIが参照すべき「コンテキスト（文脈や環境）」そのものを設計する、より踏み込んだアプローチが求められると市村氏は強調しました。

AI Workstyle Lab編集部解説：
プロンプトエンジニアリングは、AIとの対話の質を高めるための基本的なスキルです。しかし、業務でAIを継続的に活用し、複雑なタスクを任せるには、AIが置かれている状況や過去のやり取り、利用可能なツールといった「コンテキスト」を体系的に設計することが重要になります。これにより、AIはより人間のように状況を理解し、一貫性のある行動をとれるようになります。

コンテキストエンジニアリングの構成要素と期待される効果

真の業務活用を実現するためには、コンテキストエンジニアリングが不可欠です。市村氏は、AIの動作環境を定義する「6つの構成要素」の連携と、「分割」「選択」「圧縮」「書き出し」という4つの主要プロセスを統合的に実装することで、AI Agentによる自律的な業務遂行が可能になるアプローチを紹介しました。

コンテキストエンジニアリングは、AIが扱う文脈そのものを設計対象とすることで、人間の介在を最小化し、計測可能で持続的な業務効率化と高付加価値化を実現すると提言されました。このアプローチが、業務に最適化された「自律的なAI Agent」の実現へとつながるということです。

AI Workstyle Lab編集部解説：
AIを活用した業務改善は、単発のタスク自動化に留まらず、業務プロセス全体をAIに任せる「自律化」へと進化しています。コンテキストエンジニアリングは、この自律化を可能にするための基盤技術と言えます。例えば、顧客対応のAIチャットボットを導入する際も、単に質問に答えるだけでなく、過去の顧客データや社内規定、利用可能な外部ツール（予約システムなど）といった「コンテキスト」をAIに与えることで、より高度でパーソナライズされた対応が可能になります。

市村健太氏のコメント

株式会社アップグレードの代表取締役である市村健太氏は、今回の登壇について「AIの未来と実践を議論する先進的な場で登壇の機会をいただき、大変光栄に思います。多くの企業がPoC止まりの壁に直面する中、単なるAIツールの導入に留まらず、業務プロセス全体を見据えたコンテキストエンジニアリングの重要性をお伝えしました。私たちアップグレードはDify公式パートナーとして、テクノロジーとビジネス現場の橋渡しを担います。日本企業の生産性革命と自律的なAI Agent時代の実現に向けて、技術ブログなどを通じた情報発信も含めた実践的なソリューションを提供し続け、新しい時代に貢献してまいります。」と述べています。

株式会社アップグレードとDifyについて

株式会社アップグレードは、「労働生産性革命」をミッションに掲げ、生成AIソリューション事業およびリスキリング事業を提供しています。お客様の業務課題分析から生成AIを活用したシステムの企画・開発・導入、運用支援までを一貫して伴走しています。

同社は、Agentic AI開発プラットフォーム「Dify」の公式パートナー企業です。Difyは株式会社LangGeniusが提供するプラットフォームで、ノーコード・ローコードで高度なAIワークフローやエージェント、RAG（Retrieval-Augmented Generation：外部知識ベースから関連情報を検索し、生成AIが回答を生成する技術）パイプラインなどを構築できます。専門的なプログラミング知識がなくてもAI機能の実装・運用を可能にする新しいスタンダードとして、世界中で利用されています。