AIが変えるグローバル投資家の情報収集
セミナーの冒頭では、ストレイカーグループのCRO(最高収益責任者)であるデイビット・サワビー氏が登壇しました。同氏は、世界の主要投資会社の多くがAIを活用し、膨大なデータを瞬時に分析して投資判断に役立てている現状を紹介しました。
サワビー氏は、グローバル投資家への情報発信において、受け手がAIエージェントである可能性が高いと指摘。企業は自社の「物語」をAIが正確に理解できる形で開示する必要があり、この対応が今後の資金調達に大きく影響すると述べました。
日本企業の企業価値向上とIRの役割
続いて、みずほ証券株式会社の清水大吾氏が「海外投資家との対話を通じた日本企業の企業価値向上」をテーマに基調講演を行いました。
清水氏は、日本企業が直面する最大の課題は「資本コストへの意識変革」にあると強調しました。リターン重視で評価される米国市場と比較し、日本企業が投資先として選ばれるには、「将来のキャッシュフローをしっかり生み出せる確かな信頼を投資家に示すことが不可欠」だと語っています。また、日本企業には「人のお金(資本)」を預かっているという意識が希薄であり、投資家の信頼を勝ち取る努力が不足していると指摘しました。
IR部門は「コストセンター」ではなく、投資家との信頼を醸成し企業価値を高める「プロフィットセンター」としてのマインドを持つことが重要であると説きました。企業価値向上の鍵は「投資家の声を経営にフィードバックし、経営の質を高め、それを投資家に伝えるというサイクルを回すこと」であり、効率化できる業務はAIに任せ、人間は「投資家との本質的な対話」や「企業文化の変革」といった付加価値の高い業務に時間を充てるべきだと述べました。
AIをビジネスの競争優位に変えるには
対談セッションでは、日本アイ・ビー・エム株式会社の猿渡光司氏と井上忠信氏、そしてStraker Japan株式会社カントリー・マネージャーの三森暁江氏が登壇し、「AIを業務の力に変えるには」をテーマに議論が交わされました。

猿渡氏は、AI導入にあたり、従来の階層構造ではなく「新しい切り口で業務を整理していくことが重要」であると説明しました。具体的には、AIとAIが連携する領域、人とAIが協業して人の業務を高度化する領域、そして人と人が協業する領域の3軸で業務を棚卸しすることがポイントになるといいます。
IRで開示する内容は、人間にとってもAIにとっても理解される高い精度が求められます。三森氏は、この高度な情報発信において「AIは人間をどのように支援し、人間とAIはどのように役割分担しながら協働すべきか」と問いかけました。

井上氏は、人間とAIの役割を線引きするよりも「同じ目的に向かってどう協働すれば成果を最大化できるか」という観点から、業務プロセス全体を再設計する必要があると回答しました。AIには膨大なデータ処理やファクト整理といった「正確性」を任せ、文化的な背景や文脈のニュアンス、トーンを含めた「適切性」の判断は人間が担う「Human in the loop(人間が介在するループ)」を意識したプロセス設計が重要であると述べました。
IR特化型超高速翻訳プラットフォーム「SwiftBridge AI」
セミナーの後半では、Straker Japanの三森氏が、IR領域に特化した超高速翻訳プラットフォーム「SwiftBridge AI」の概要と特徴を発表しました。
ストレイカーグループは、30年近くにわたり蓄積してきた言語分野の知識・ノウハウをもとに、独自の「Tiri(ティリ)モデル」を開発。2025年3月より日本市場で展開を開始したSwiftBridge AIは、日本企業の決算短信を英語で同時開示するために開発されました。

三森氏は、英語ネイティブ企業としての英語の知見と、日本の開示文書の特性を熟知していることから、IR情報の日英同時開示義務化による日本企業の課題解決に貢献できるという手応えがあったと、日本市場参入の背景を語りました。
SwiftBridge AIは、複数のAIエージェントが連携することで、従来の人間のみのワークフローと比較して、翻訳業務にかかる時間とコストを大幅に削減します。例えば、決算短信の全編英訳はページ数に関わらず3営業日以内、英文エグゼクティブ・サマリーの生成は1日で可能です。また、適時開示情報も1万文字までなら1営業日で返却され、決算説明プレゼンテーション資料もレイアウト修正不要の英語版パワーポイントが最短3日で納品されます。
このプラットフォームでは、AIエージェントが高速で翻訳・推敲し、資料全体の一貫性を保ちながらレイアウトの最適化まで行いますが、最終チェックは必ず人間の専門家が実施するプロセスが組み込まれています。汎用型AIでは難しい、投資家の使う専門言語や業界用語の理解と適切な翻訳を、「Tili-J」モデルは日本企業の財務開示データをもとに学習することで実現しています。グローバル投資家にとって読みやすく、意味を汲み取りやすい英語の文章を作り出すよう最適化されているのが特徴です。
ストレイカーグループは、自らの海外投資家との対話経験や、AIを活用したコンテンツの自動化・翻訳技術、高い情報セキュリティが、日本企業のIRを支える上で強みになると捉えています。三森氏は、「安全なAI、安全な環境、安全なクラウドプラットフォームを徹底し、信頼の置ける企業との共創活動を通じて、これからもSwiftBridge AIを広めていきたい」と述べ、セミナーを締めくくりました。
好評につき追加ウェビナー開催決定
本セミナーの好評を受け、追加ウェビナーの開催が決定しました。参加を希望される方は、以下のURLよりお申し込みください。
開催期間は2025年12月17日(水)から2026年1月29日(木)までの火・水・木曜日です。年末年始の開催はございませんので、詳細はURLをご確認ください。
Straker Japan株式会社について
Strakerは1999年にニュージーランドで設立された、AIテクノロジーを基盤とする言語ソリューションのリーディングカンパニーです。20年以上にわたり、AIテクノロジーと人間の専門性を組み合わせたサービスを120以上の言語で多国籍企業に提供してきました。2018年にオーストラリア証券取引所(ASX)に上場しています。Straker Japan株式会社は、その日本法人としてSwiftBridge AIなどの言語ソリューションを日本企業向けに提供しています。
AI Workstyle Lab編集部コメント
今回のStraker Japanが開催したセミナーと「SwiftBridge AI」の発表は、IR業務におけるAIの具体的なビジネス活用を示唆しています。IR情報の日英同時開示義務化という、日本企業が直面する喫緊の課題に対し、AIが高速かつ高精度な翻訳を提供することで、業務の効率化とコスト削減に大きく貢献する可能性を秘めています。これは単なる翻訳ツールの導入に留まらず、海外投資家との円滑なコミュニケーションを促進し、企業の透明性と信頼性を高めることで、結果的に企業価値向上、ひいては資金調達力の強化に直結するでしょう。IR部門が「プロフィットセンター」としての役割を果たすための強力な後押しとなることは間違いありません。グローバル展開を目指す企業にとって、多言語での情報発信におけるAI活用のヒントが満載の事例と言えます。
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本記事は、各社の公式発表および公開情報を基に、AI Workstyle Lab編集部が 事実確認・再構成を行い作成しています。一次情報の内容は編集部にて確認し、 CoWriter(AI自動生成システム)で速報性を高めつつ、最終的な編集プロセスを経て公開しています。

