AI時代のIR設計を読み解く：サステナブル・ラボの統合報告書ランキングが示す企業の未来

AI時代の情報開示：機械可読性の重要性
診断対象と手法
- 対象企業と資料
- 診断手法（8つの視点）
「機械可読性の高い」統合報告書ランキング TOP50（2025年PDF版）
サマリー（傾向）
企業実務への示唆
サステナブル・ラボの提供価値
解説イベントの開催予定
サステナブル・ラボ株式会社について
- AI Workstyle Lab編集部コメント

AI時代の情報開示：機械可読性の重要性

ESG開示の高度化に伴い、統合報告書の情報量は増加傾向にあります。これに対し、投資家やアナリスト、評価機関のレビュー工数には限界があるため、AIやクローラーによる「機械による収集・解析」を前提とした情報設計の重要性が高まっています。サステナブル・ラボは、統合報告書が「人間だけでなく機械（AIを含む）も読者となる」時代において、企業のIR高度化と資本市場での評価向上に資する指標として「機械可読性（AI可読性）」に着目し、ランキングとして可視化しました。

診断対象と手法

対象企業と資料

対象企業: 東証に上場し統合報告書を発行している企業のうち、時価総額上位960社（2025年11月末時点の時価総額）です。
対象資料: 2025年11月末時点の最新の統合報告書（PDF）です。複数・分割発行されている場合は、PDF版・本編・総合版・A4版・閲覧用のみを診断対象としています。

診断手法（8つの視点）

機械可読性に関する以下の8つの視点で診断が行われました。

テキスト抽出性
表の機械可読性
論理構造／見出し階層の明確性
ナビゲーション／ハイパーリンク設計
段落粒度／冗長性
要約／対話性
メタデータ／テクニカル健全性
一貫性／アクセシビリティ補助

このランキングは「統合報告書PDFという成果物の機械可読性」を対象とするものであり、企業の財務内容・ESGパフォーマンス・開示内容の正確性や充実度を直接評価するものではありません。

「機械可読性の高い」統合報告書ランキング TOP50（2025年PDF版）

本リリースでは、上位50社の社名・業種・高評価ポイントが公開されています。

以下はランキングの一部です。

順位	企業名	業種	テキスト抽出性	表の機械可読性
1	トヨタ自動車	自動車・輸送	◯	◯
2	パナソニックホールディングス	電機・精密	◯	◯
3	東急建設	建設・資材	◯
4	ホシデン	電機・精密	◯	◯
5	第一稀元素化学工業	素材・化学	◯	◯

6位以降、その他の評価項目はプレスリリース添付資料PDFをご参照ください。

サマリー（傾向）

TOP50で高評価を得た企業が多かったのは、「テキスト抽出性」（38社）、「表の機械可読性」（34社）、「ナビゲーション／ハイパーリンク設計」（34社）でした。
「論理構造／見出し階層の明確性」（27社）、「メタデータ／テクニカル健全性」（27社）も一定数の企業で高評価が見られました。
一方で、「段落粒度／冗長性」「要約／対話性」「一貫性／アクセシビリティ補助」は高評価企業が限定的であり、今後改善の余地が大きい領域と言えます。
業種別では「情報通信・サービスその他」（12社）、「電機・精密」（10社）などが上位に多くランクインしています。

企業実務への示唆

機械可読性の改善は、PDF制作工程のわずかな見直しで大きく改善するケースがあります。比較的着手しやすい改善例として以下が挙げられます。

画像化テキストの削減（テキストレイヤーの保持、コピー＆検索可能な状態への改善）
表の構造化（セル境界・見出し行/列の明確化、機械が列見出しを追える配置への調整）
見出し階層の明確化（H1/H2/H3相当の一貫性、段組・注釈の読み順整理）
目次・章間のリンク設計（PDFしおり、目次リンク、参照先へのジャンプ機能の設置）

サステナブル・ラボの提供価値

サステナブル・ラボは、非財務データ基盤「TERRAST」および「TERRAST for Enterprise」を通じて、ESG情報の整備・開示の高度化を支援しています。AI時代のIR設計に関する評価・改善支援、社内制作フローへの落とし込み支援なども提供しています。

AI可読性診断の詳細、改善支援、個別企業の結果の照会については、以下のリンクよりお問い合わせください。
お問い合わせ

解説イベントの開催予定

2026年1月16日（金）に、本ランキングを題材とした解説イベントが東京・大手町で開催される予定です。なぜ今「AI可読性」が重要なのか、機械に“読まれやすい”統合報告書にはどのような共通点があるのか、実務にすぐ活かせる設計上のポイントや好事例が紹介されるとのことです。申し込みページは後日、サステナブル・ラボのPeatixページで公開されます。

サステナブル・ラボ Peatixページ

サステナブル・ラボ株式会社について

サステナブル・ラボ株式会社は、機関投資家・金融機関・プロファーム向けのESGデータ分析プラットフォーム「TERRAST」や、大手上場企業向けのESGデータ開示・分析支援ソリューション「TERRAST powered by Uniqus」、中小企業/サプライヤー向けのESGデータ集計・可視化ツール「TERRAST for Enterprise」、サステナブル企業名鑑「テラスTV」を提供するESGテックカンパニーです。

データサイエンスとサステナビリティ、金融領域の知見を結集させ、データドリブンなESG経営支援を企業規模問わず提供することで、社会・環境貢献と経済をシームレスに接続することを目指しています。

AI Workstyle Lab編集部コメント

サステナブル・ラボが発表した「AIフレンドリー統合報告書ランキング」は、AI時代の企業IR設計において非常に重要な指標を提示しています。統合報告書が機械可読性を高めることで、投資家や評価機関による情報収集・分析の効率が向上し、企業のESG評価にも良い影響を与える可能性が高いでしょう。特に、テキスト抽出性や表の機械可読性、ナビゲーション設計といった改善しやすいポイントから着手することで、企業の開示戦略が大きく進化するきっかけになることが期待されます。これは、データドリブンな経営が求められる現代において、資本市場との建設的な対話を深めるための新たな一歩と言えるでしょう。

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