日本企業の97.5%がソフトウェア品質リスクを認識
調査の結果、システムやサービスの安定性・信頼性に関して「リスクを感じていない」と回答した企業はわずか2.5%にとどまり、97.5%の日本企業が何らかのソフトウェア品質リスクを認識していることが明らかになりました。具体的には、情報セキュリティやデータ管理、サービス停止時における業務や顧客への影響、そして障害やトラブル対応にかかるコスト負担などが挙げられています。
こうした懸念があるにもかかわらず、テスト全体の自動化率を見ると、自動化率60%未満の企業が64%を占めており、手動テストが依然として主流である実態も明らかになりました。
また、回答者の半数(50.6%)が、ソフトウェア品質を「最重要経営課題」または「経営リスク要因」として認識し、これに次ぐ重要要素として捉える回答も含めると約80%以上の回答者が、品質を単なる現場レベルの課題ではなく「経営が扱うべきテーマ」として捉えていることが分かりました。こうした企業では、認識が低い企業に比べ、AI搭載型テスト自動化ツールを本番環境で運用している割合が高く、KPI管理などガバナンスが浸透している傾向がみられました。さらに、約9割が品質保証体制の維持・強化における人材採用・定着の課題を抱えており、「品質を担うための適切なスキルを持つ人材の不足」が大きな制約となっていることも浮き彫りになっています。
Tricentis Japan合同会社 代表執行役 成塚 歩氏は次のように述べています。
「今回の結果から、多くの日本企業が自社のテクノロジーシステムやサービスの安定性を一貫して提供し続けられるかどうかという点で、2026年を迎える前に、十分な確証を持てていないことが見られました。世界的に大規模なシステム障害が相次ぎ、それらのビジネスに与える影響がオペレーション上、レプリケーション上のリスクであることを踏まえると、これは大きな懸念材料と言えるでしょう。デジタル環境がさらに複雑化していくなか、多くの企業は、こうした課題に対応する手段としてAI活用に一層の期待を寄せると考えられますが、適切なガバナンスが伴わなければ、AIが問題を加速させてしまうリスクもあります。
テスト自動化やAIを十分に活用し、品質を競争力と成長の源泉に変えていくためには、品質を“現場のタスク”から“戦略的な経営課題”として捉え直すことが不可欠です。ソフトウェア品質とテストのグローバルリーダーであるTricentisは、企業のソフトウェア開発のプロセスに品質を組み込み、一つ一つの変更が信頼向上につながるよう支援しています。品質を経営課題として位置づけることによって、日本企業は『スピードか品質か』という古いトレードオフから脱し、信頼を持続的な競争優位へと転換させることができるでしょう。」
本調査は、従業員数1,000名以上の大手・エンタープライズ企業に所属し、自社のソフトウェア開発・テスト・品質保証に責任者またはマネージャーとして関わるIT/DX/情報システム部門の401名を対象に実施されました。調査の主な結果は以下の通りです。
調査結果のハイライト
6割超が手動テスト中心、DX後も続く「後工程の手動依存」
自社のシステムテスト全体における自動化率を尋ねたところ、「手動テスト中心」が36.4%で最も多く、約4割弱を占めました。さらに、「手動・自動化が同程度(40〜60%)」も27.7%に達し、半数を超える企業が、テスト工程の大部分を依然として人手に頼っている実態が明らかになりました。一方、「自動化中心(70%以上)」は15.2%、100%自動化は3.7%にとどまります。特に結合・システム・受入テストなど後工程ほど自動化が遅れ、障害発見の遅延やリリース遅延の主要因となっています。
多くの企業が品質を経営リスクとして認識、リスク無自覚は僅か2.5%
本調査では、システムやサービスの安定性・信頼性に関して、ほとんどの企業が何らかのリスクを感じていることが分かりました。特に、情報セキュリティやデータ管理への不安(65.3%)、サービス停止時の業務・顧客への影響(62.6%)、障害・トラブル対応にかかるコスト負担(48.1%)が上位に挙がり、一方でリスク無自覚は2.5%にとどまりました。品質が広くビジネス上のリスクに直結する領域として認識されていることが明らかになっています。
品質を「経営課題」と見る組織ほど、AI活用とKPIガバナンスが進展
ソフトウェア品質を「最重要経営課題」または「経営リスク」と認識する回答者は全体の半数(50.6%)に達しました。こうした企業では、認識が低い企業に比べ、AI搭載型テスト自動化ツールを本番環境で運用している割合がより高い傾向が確認されました。
また、品質を経営課題として認識する組織ほど品質に関するKPIを設定し、経営会議で定期的にレビューする運用が根付いており、こうしたガバナンスの成熟がAIツールの定着と効果を左右している可能性が示唆されます。言い換えれば、「経営の姿勢」が変革スピードを左右する重要な要因となっていると言えます。
人材課題の本質は「人数不足」だけでなく、「組織体制」「スキル」の欠如
回答者の約9割が品質保証体制の維持・強化に人材面の課題を感じており、その要因は単なる人材不足(41.8%)だけでなく、システムの複雑化に対応しきれない組織体制の問題(39.7%)や、計画的な取り組みがしづらい(33.5%)など、必要な能力・スキルが不足している点にも指摘が集まりました。多くの企業でAI活用は実証(PoC)段階にとどまり、『AIを知っている』ことと『効果的に使いこなす』ことの間にギャップがある実態もうかがえます。
生成AI活用の増加と、品質保証の重要性の高まり
AI生成コードがソフトウェア障害リスクを「高めている」と感じている回答者が過半数(55.4%)を占める一方、AI生成コードの増加を受けて「テスト・品質保証の重要性が高まった」と回答した企業は71.5%に達しました。生成AIが開発生産性を押し上げる一方でリスクも増幅し得ることを多くの企業が認識しており、それに対応するためのQA体制やガバナンス強化が急務となっていることがうかがえます。
AIエージェントに対する高い期待と、自己修復型自動化へのシフト
約7割(69.3%)の回答者がAIエージェントの活用に対して前向きで、品質保証の高度化に対する期待が高まっています。すでに約3割(27.9%)の企業がAIエージェントを導入済みで、日本市場でも具体的な導入フェーズに入っていることが明らかになりました。期待される機能の上位には、テストケースの自動生成・最適化(40.1%)や、障害発生時の原因分析と修正案の提示(38.9%)が挙げられ、テスト自動化の保守負荷を減らす「自己修復型」領域への期待の高さも読み取れます。
今後の投資計画では、約半数(50.9%)がAIエージェントや生成AIの活用を検討し、39.9%がAIテスト自動化ツールへの投資も視野に入れています。さらに、4割(42.4%)が、AIエージェントの導入によりITチームのスリム化が進むと見込んでおり、「より少ない人数で、より高い品質を維持する」体制への移行が加速していくと考えられます。
本調査の詳細はこちらからダウンロードいただけます。
- Tricentis Japan 2025年レポート 「品質保証体制とテスト自動化の現状」~AI時代における課題と「経営資産化」へのロードマップ~: https://www.tricentis.com/ja/resources/current-state-quality-assurance-systems-test-automation-report
Tricentis(トライセンティス)について
トライセンティスは、継続的なテストソリューションとテストプラットフォームのグローバルリーダーです。トライセンティスのAIを活用したソリューションは、ソフトウェアテストをこれまでとは根本的に異なるレベルまで変革します。完全にコードレスで自動化された、AIによってインテリジェントに実行するアプローチです。アジャイル開発と複雑なエンタープライズアプリケーションの両方に対応し、ソフトウェアリリースのスピードを加速し、コストを削減し、品質を向上させることで、お客様のデジタル変革をご支援しています。トライセンティスは、DevOps、クラウド、エンタープライズアプリケーション向けのソフトウェアテストを革新したことで広く評価され、Gartner社、Forrester社、IDC社を含む主要な業界アナリストからリーダーとして認められています。McKesson社、Allianz社、Telstra社、Dolby社、Vodafone社などの世界の著名なブランドを含む3,000社以上がトライセンティスのテストソリューションを活用しています。詳細については、https://www.tricentis.com/jaをご覧ください。
AI Workstyle Lab編集部コメント
今回の調査結果は、ソフトウェア品質が単なる開発現場の課題ではなく、企業の競争力と成長を左右する経営戦略上の重要テーマであることを明確に示しています。AIを活用したテスト自動化は、リリースサイクルを加速し、品質を向上させるだけでなく、IT人材のスキルギャップを埋め、生産性を飛躍的に高める可能性を秘めています。特に、金融、製造、小売など、大規模システムを運用する企業にとって、AIエージェントによる自己修復型自動化は、サービス安定化とコスト削減に直結するでしょう。品質を経営資産として捉え、AI投資を戦略的に進めることが、今後のビジネス成長の鍵を握ると考えられます。
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本記事は、各社の公式発表および公開情報を基に、AI Workstyle Lab編集部が 事実確認・再構成を行い作成しています。一次情報の内容は編集部にて確認し、 CoWriter(AI自動生成システム)で速報性を高めつつ、最終的な編集プロセスを経て公開しています。

