FRONTEOの医学論文探索AI「KIBIT Amanogawa」、慶應義塾大学の難治がん研究に採用
株式会社FRONTEOの医学論文探索AIシステム「KIBIT Amanogawa(キビットアマノガワ)」が、慶應義塾大学薬学部 病態生理学講座の難治がん研究に導入されました。既存の治療法が効きにくい難治がんに対し、特化型AI「KIBIT」が新たな治療法開発を支援します。
慶應義塾大学薬学部 病態生理学講座の研究概要
慶應義塾大学薬学部 病態生理学講座は、去勢抵抗性前立腺がんや多発性骨髄腫など、既存の「免疫チェックポイント阻害薬」※1が効果を示しにくい「難治がん」に対する新しい免疫治療法の開発に取り組んでいます。
特に、独自に見出したがん細胞に高発現している「抗原」※2に特異的な「T細胞受容体」※3遺伝子を用いた「遺伝子改変T細胞療法」※4の研究など、国際的に注目される先端研究を推進しています。
※1 免疫チェックポイント阻害薬:体の免疫細胞ががん細胞を攻撃するのを妨げるブレーキ(免疫チェックポイント)を解除し、がんへの攻撃力を回復・増強させる薬です。
※2 抗原:体にとって異物と認識され、免疫反応を引き起こす物質です。がん細胞の表面にある特徴的なタンパク質なども含まれます。
※3 T細胞受容体:免疫細胞の一種であるT細胞の表面にある、特定の異物(抗原)を認識するためのセンサーのような働きをする分子です。
※4 遺伝子改変T細胞療法:患者さん自身のT細胞を採取し、特定の抗原を認識できるように遺伝子を改変して体に戻すことで、がん細胞を攻撃させる治療法です。
KIBIT Amanogawaを選定した理由
このような挑戦的な研究を進める上で、世界中の3,500万報以上の医学論文の中から関連する知見を網羅的に探索し、未知の遺伝子や疾患とのつながりを見出すことは不可欠です。
慶應義塾大学薬学部 病態生理学講座は、未解明の遺伝子機能や新規仮説の生成を可能にし、研究者の発想を大きく広げるFRONTEOの医学論文探索AIシステム「KIBIT Amanogawa」に着目しました。従来の検索方法や人手によるレビューでは到達できない「非連続的発見」※5を実現できる点が評価され、導入の決め手となりました。
※5 非連続的発見:従来の延長線上ではない、予期せぬ新しい知見や関連性を見出すことです。AIは膨大なデータから人間が見落としがちなパターンや関係性を見つけ出し、この「非連続的発見」を促進する可能性を秘めています。
AI Workstyle Lab編集部の解説
AIによる「非連続的発見」は、研究のあり方を大きく変える可能性を秘めています。人間が意識的に検索するキーワードやカテゴリに囚われず、AIがデータ内の潜在的な関連性を見つけ出すことで、思わぬ発見につながることが期待されます。これにより、研究者はより本質的な考察や実験に集中できるようになり、研究サイクル全体の加速に貢献するでしょう。AIは、私たちの仕事における思考の幅を広げ、新たな価値創造を支援する強力なツールとなり得ます。
関係者のコメント
慶應義塾大学薬学部 病態生理学講座の松下 麻衣子 教授は、次のように述べています。「KIBIT Amanogawaに関するウェビナーを視聴する機会があり、従来の文献検索とは異なる仕組みで瞬時に遺伝子や現象に関する大量の情報が得られることに驚きました。研究室で行っているがん免疫研究に是非活用したいと考えています。また、株式会社FRONTEOの担当の方々の手厚いサポート体制も導入のきっかけになりました。」
FRONTEOの取締役/CSO(Chief Science Officer)豊柴 博義氏は、「慶應義塾大学薬学部 病態生理学講座が挑戦されている難治がんに対する新規免疫治療法の研究は、極めてチャレンジングでありながら、国際的にも大きな意義を持つ取り組みだと考えています。そのような先進的な研究に当社の医学論文探索AIシステムKIBIT Amanogawaを導入いただけたことを、大変嬉しく思っております。KIBIT Amanogawaが研究の一助となり、『アンメット・メディカル・ニーズ』※6に苦しむ患者のための新しい治療法の開発や、医学・薬学研究のさらなる発展につながることを心から願っております。」とコメントしています。
※6 アンメット・メディカル・ニーズ:まだ有効な治療法が見つかっていない病気に対して、新たな治療薬や治療法が強く求められている状態を指します。
今後の展望
FRONTEOは今後も、AI創薬のリーディングカンパニーとして、自然言語処理に特化したAIの研究開発とその社会実装を通じ、革新的医薬品の研究開発とアンメット・メディカル・ニーズ解消に貢献していくとしています。「日本を再び創薬の地へ」という理念の下、医薬品産業を自動車、半導体に次ぐ基幹産業へと成長させ、薬を必要とするすべての人に適切に届けられるフェアな世界の実現を目指します。
KIBIT Amanogawaについて

「KIBIT Amanogawa」は、非連続的発見という新しいアプローチによって、論文に記載されていない未報告の遺伝子と疾患の関連性を発見するFRONTEO独自の自然言語処理アルゴリズムを用いた医学論文探索AIシステムです。
PubMed※7に掲載される3,500万報以上の論文データから、関連性の高い情報を即時に検出・解析・提示し、研究者の論文探索と仮説生成を効率化・高度化します。これにより、従来人手で行っていた膨大な作業を大幅に削減するとともに、網羅的かつバイアスを排除した解析を実現し、新たな着想の発見を促進します。
KIBIT Amanogawaの詳細については、以下のリンクをご覧ください。
※7 PubMed:米国国立医学図書館 国立生物科学情報センターの生物・医学領域論文データベースです。
PubMedウェブサイト
株式会社FRONTEOについて
FRONTEOは、自社開発の特化型AI「KIBIT(キビット)」の提供を通じて、日夜、社会課題と向き合う各分野の専門家の判断を支援し、イノベーションの起点を創造しています。同社独自の自然言語処理技術は、汎用型AIとは異なり、教師データの量およびコンピューティングパワーに依存することなく、高速かつ高精度での解析を可能にします。
解析した情報をマップ化(構造を可視化)する特許技術を活用することで、「KIBIT」が専門家のインサイトにダイレクトに働きかけ、近年では創薬の仮説生成や標的探索にも生かされています。
FRONTEOは、「記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する」という理念の実現に向けて、以下の各事業で社会実装を推進しています。

