FRONTEO、経済安全保障AIソリューション「KIBIT Seizu Analysis」をアップデート
株式会社FRONTEOは、経済安全保障対策AIソリューション「KIBIT Seizu Analysis」に新機能を追加し、アップデートを実施しました。これにより、デューデリジェンス(企業や投資対象の価値やリスクを評価するための調査活動)の効率化と高度化が実現されます。
サプライチェーンリスクアセスメント体制の強化
近年、世界的に地政学的リスクが高まっています。米国の通商政策転換、中国によるレアアース輸出規制、ウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化などがその背景にあります。これに伴い、各国では経済制裁や輸出管理の枠組みが一段と強化・厳格化されており、企業や組織はサプライチェーン(製品やサービスが顧客に届くまでの、原材料の調達から生産、流通、販売までの一連の流れ)における健全性の確保と説明責任を果たすことが求められています。
このような状況下で、公開情報(オープンソース)を活用した高度なデューデリジェンスやリスクアセスメント(潜在的なリスクを特定し、その影響度や発生確率を評価するプロセス)の重要性が一層高まっています。
今回のアップデートでは、制裁リストなどのリスク情報を統合した新データベースと、取引ネットワークを可視化・分析するリスクモニタリング機能が新たに搭載されました。これらの機能強化により、企業、研究機関、行政機関は、経済安全保障リスクに対応するための情報収集・分析プロセスを効率化・高度化し、サプライチェーン全体の透明性を確保するためのリスクアセスメント体制を強化することが可能となります。
統合データベースの搭載
各国政府や国際機関が公表する制裁リストおよびウォッチリストを統合したデータベースが構築され、「KIBIT Seizu Analysis」上で複数のリストを横断的に照合できる新機能が追加されました。これにより、ユーザーは制裁対象の効力日や更新履歴、対象となる組織・個人の属性情報を一元的に確認できます。本データベースは、各リストの更新情報を随時反映し、常に最新の状態を維持します。

リスクモニタリング機能の搭載
リスクモニタリング機能により、ユーザーは確認対象企業の取引ネットワークの中から、懸念組織との関係性やリスクのある取引経路を特定し、経路ごとの評価結果を保存できます。これにより、取引ネットワーク全体を対象としたデューデリジェンスやリスクアセスメントに必要な情報処理が効率化されます。さらに、リスク情報や取引ネットワークの更新を随時反映することで、継続的かつ高度なリスク監視を実現します。

FRONTEOの経済安全保障事業
FRONTEOは、リスクマネジメント事業において、膨大な情報と見えないネットワークに潜むリスクを可視化し、経済安全保障に関する事業・経営戦略の策定と推進を支援することを目的として、経済安全保障分野の事業を展開しています。この事業では、経済安全保障対策AIソリューション「KIBIT Seizu Analysis」と、企業における経済安全保障対応を統括する組織「経済安全保障室」の立ち上げを包括的に支援する「経済安全保障室立ち上げ支援サービス」を提供しています。
「KIBIT Seizu Analysis」は、自社開発の解析技術を搭載した、サプライチェーンや企業の実質株主による支配状態などのネットワーク解析を行うシステムです。現在、下記の3つのソリューションを提供しています。
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サプライチェーン解析ソリューション:サプライチェーンにおけるチョークポイント(戦略的に重要な地点)や懸念組織とのつながりの可能性、依存度を把握します。
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株主支配ネットワーク解析ソリューション:複雑なネットワーク上での株主間の影響力を、間接持株比率を補正した独自の手法により解析し、隠れた支配力の伝搬を把握します。
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研究者ネットワーク解析ソリューション:機微技術に関わる研究開発について、研究者の所属組織などに注目した人脈の分析と、それに基づくリスクを把握します。
株式会社FRONTEOについて
FRONTEOは、自社開発の特化型AI「KIBIT(キビット)」の提供を通じて、社会課題と向き合う各分野の専門家の判断を支援し、イノベーションの起点創造に貢献しています。独自の自然言語処理技術(日本・欧州・米国・韓国特許取得済)は、汎用型AIとは異なり、教師データの量やコンピューティングパワーに依存することなく、高速かつ高精度での解析を可能にします。また、解析した情報をマップ化(構造を可視化)する特許技術を活用することで、「KIBIT」が専門家のインサイトにダイレクトに働きかけ、近年は創薬の仮説生成や標的探索にも活用されています。

KIBITの独自技術およびアプローチを通じて、「記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する」という理念のもと、以下の各事業で社会実装を推進しています。
AI Workstyle Lab編集部からの解説
FRONTEOの「KIBIT Seizu Analysis」のアップデートは、現代のビジネス環境においてますます重要となる経済安全保障対策をAIで強力に支援するものです。特に、地政学的リスクが高まる中、企業がサプライチェーンの透明性を確保し、潜在的なリスクを早期に特定することは、事業継続性にとって不可欠です。AIが制裁リストの横断検索や取引ネットワークの継続的なモニタリングを自動化することで、担当者の負担を大幅に軽減し、より戦略的なリスク管理に集中できるでしょう。これは、AIを単なる効率化ツールとしてだけでなく、複雑な国際情勢に対応するための「インテリジェンスパートナー」として活用する好例と言えます。AIを活用することで、これまで見過ごされがちだったリスクの兆候を捉え、迅速な意思決定を支援する新たなワークスタイルが期待されます。

