アナログ・インメモリコンピューティング(AIMC)の体系化
千葉工業大学の酒見悠介氏、名古屋大学の粟野皓光氏、九州工業大学の森江隆氏による研究チームは、超低消費電力AIハードウェアとして期待される「アナログ・インメモリコンピューティング(AIMC)」に関する招待付きチュートリアル論文を発表しました。この論文は、AIMCの実用化に向けた理解を深める重要な内容を含んでいます。
AIMCは、AI処理において大きな電力消費の原因となる「プロセッサとメモリ間のデータ移動」を削減するため、メモリ内部で演算を実行する計算技術です。

AI計算の中核である行列ベクトル積のような演算を、高いエネルギー効率で実行できる点が特徴です。
AIMCの演算方式を6種類に分類
本チュートリアル論文の主な貢献の一つは、AIMCの演算方式をメモリの種類に依存せず、以下の6種類に体系的に整理したことです。
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電流ドメイン
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電荷ドメイン
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電荷再分配
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容量分割
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抵抗分割
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時間ドメイン
AIMCは一般的に、図のようなクロスバーアレー構造を用いて計算を行います。入力は横方向の配線(ワード線)に与えられ、出力は縦方向の配線(ビット線)から得られます。交点にはメモリ素子が配置され、重み行列を表現します。しかし、入出力や重みをどの物理量で表すか、乗算と総和をどの回路原理で実行するかは多様であり、これまでは全体像の理解が容易ではありませんでした。

論文では、行列ベクトル積の計算原理に着目し、各演算方式の仕組みを詳細に解説しています。例えば、current-domain IMCでは、入力を電圧値、重みをコンダクタンスとして表現し、オームの法則とキルヒホッフの電流則によって積和演算を実行します。

これにより、同じメモリを用いる場合でも異なる演算原理を採用できることが明らかになり、適切な演算方式の選択や新たな組み合わせの検討に繋がります。

非理想性とハードウェアを考慮した学習手法(HAT)の体系化
AIMCの実用化には、アナログ演算に起因する非理想性への対策が不可欠です。本論文では、これらの課題を「デバイス起因」と「回路構造起因」に分類し、それぞれの代表例と対策を解説しました。
さらに、非理想性の影響を学習段階で取り込む手法である「hardware-aware training(HAT)」を以下の3つの系統に体系的に整理しています。
- Probabilistic/Precise modeling: ハードウェアのばらつきや量子化、IR dropなどを学習モデルに取り込む方法です。重みにノイズを加えてロバスト性を高める手法などが含まれます。
- Physical modeling: AIMCの動作を微分方程式などの物理モデルで詳細に表現し、学習モデルに組み込む方法です。
- Hardware-in-the-loop training: 推論を実際のハードウェアで行い、誤差逆伝播を数理モデルを通して行う手法です。実ハードウェアの入出力データを取り込むことで、複雑な非理想性にも対応できます。

今後の展望
本チュートリアル論文は、AIMCの回路原理から非理想性、ハードウェアを考慮した学習手法までを体系的に整理しました。しかし、大規模なAIモデルを動作させるには、複数の行列ベクトル積タイルを組み合わせる必要があり、信号の一時保存や伝搬経路の制御、製造ばらつきや温度変化への対応など、実用化に向けた課題も残されています。
AIMCは、AI計算におけるデータ移動を減らすことで、エネルギー効率の高いAIハードウェアを実現する有力な候補です。デバイス技術、回路設計、数理的設計手法、AIアルゴリズムを統合的に考えることで、エッジAIやロボットなど、限られた電力環境で動作するAIハードウェアの発展が期待されます。
論文情報
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雑誌名: IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
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論文題目: Analog In-Memory Computing from a Memory-Agnostic Perspective: Theory, Nonidealities, and Hardware-Aware Training
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著者: Yusuke Sakemi, Hiromitsu Awano, Takashi Morie
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URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/transfun/E109.A/5/E109.A_2025GCI0001/_article/-char/ja
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DOI: 10.1587/transfun.2025GCI0001
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論文掲載日: 2026年5月1日
AI Workstyle Lab編集部コメント
今回発表されたアナログ・インメモリコンピューティング(AIMC)の体系化は、AIハードウェア開発において重要な指針となります。特に、メモリ種に依存しない演算方式の整理や、非理想性への対策、ハードウェアを考慮した学習手法の分類は、今後の研究開発の効率を大きく高めるでしょう。デジタルAIチップの高性能化が進む一方で、電力効率が課題となるエッジAI領域では、AIMCのようなアナログ技術がゲームチェンジャーとなる可能性を秘めています。この論文は、その実用化に向けたロードマップを提供するものです。
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本記事は、各社の公式発表および公開情報を基に、AI Workstyle Lab編集部が 事実確認・再構成を行い作成しています。一次情報の内容は編集部にて確認し、 CoWriter(AI自動生成システム)で速報性を高めつつ、最終的な編集プロセスを経て公開しています。

