J-StarX US Healthcare Breakthroughプログラムについて
J-StarXは、経済産業省による起業家育成・海外派遣プログラムです。その中でも「US Healthcare Breakthroughプログラム」は、ジェトロおよびMayo Clinic Platformが経済産業省の協力のもと2024年度から実施しており、Mayo Clinic Platform、Mayo Clinic Berg Innovation Exchange、そして米国のベンチャーキャピタルKicker Venturesと連携し、米国市場での事業開発、実証実験、パートナー探索、商業化を支援します。
AIBTRUST株式会社が採択されたFoundationalコースは、地域ごとに異なる規制の理解や知識習得、戦略策定、エビデンス構築などを実践的に後押しし、グローバルに挑戦するヘルスケアスタートアップの創出を目指すものです。
ジェトロによる発表の詳細は、以下のウェブサイトで確認できます。
医療AIにおける学習データ汚染のリスク
医療分野への生成AIの導入が進む一方で、学習データに誤情報を混入させる「データポイズニング(学習データ汚染)」が新たなリスクとして指摘されています。2025年のNature Medicine誌に掲載された研究では、医療LLMを対象に学習トークン全体の0.001%を汚染させた場合、有害な回答が増加することが報告されています。これは1,000億トークンのうち100万トークン、記事にしておよそ2,000本に相当する量です。また、汚染されたモデルが標準的なベンチマーク評価で汚染のないモデルと同等のスコアを示すことも報告されており、通常の性能評価では汚染の有無を判別できない可能性が示されています。
医療分野では、AIの出力が診断支援や文書作成など医師の判断に関わる場面で用いられるため、学習に用いるデータの適正性を事前に確認できる仕組みが求められています。
匿名加工情報では来歴を追跡できない課題
医療データをAI開発に利用する際、従来はプライバシー保護のために匿名加工が用いられてきました。しかし、匿名加工は加工の時点でデータの出所が特定できなくなるため、誤りが判明した場合に本人へ照会して訂正したり、汚染されたレコードを特定して除外したりすることが困難になります。

AI開発に用いる医療データには、プライバシー保護に加えて、出所を証明できることが求められます。
AIBTRUSTのTRUST基盤による医療データの信頼性担保
AIBTRUST株式会社は「医療データが循環する社会」を日本から世界へ広げるというビジョンのもと、医療データの信頼性を担保するTRUST基盤を開発しています(特許第7498999号ほか)。この基盤は、カルテ情報を医療機関内に保持したまま、患者本人が保有する鍵によって利用を制御する設計で、以下の6点を担保します。

- 出所の証明:どの医療機関で、どの医師が診断し、いつ発生した情報かを、データ1件ごとに記録します。
- 本人同意の証明:誰が、どの目的に、いつ同意したかを、検証可能な記録として保持します。
- 改ざん不能な利用ログ:誰がいつ何に利用したかをブロックチェーンに記録し、事後の改ざんを防止します。
- トラストの否定:誤りや同意の撤回が判明した際に、当該データの信頼を取り消し、下流のモデルへ無効化を伝播させます。
- 非匿名化のまま利用:本人同意を前提にメモリ上でのみ利用し、国内完結・3省2ガイドラインに準拠します。
- FHIR準拠:返却情報を国際標準規格FHIR形式へ自動変換し、国内外の医療システムと接続します。
このうち「トラストの否定」は、学習データ汚染への対処手段として機能します。誤情報の供給元を特定して当該データのみを無効化する、患者本人の撤回の意思を以後の利用に反映する、診断の訂正を利用先まで伝播させるといった対応は、いずれもデータの来歴が記録されていることを前提としています。
AI監査:判断根拠の追跡に必要な5つの証跡
AIの判断根拠を事後に検証するためには、学習および推論に用いられたデータを1件ずつ遡って確認できる必要があります。TRUST基盤では、出所・本人同意・加工・学習・推論利用の5項目について証跡を記録できる設計です。このうち本人同意と推論・利用については、医療機関向けシステム「ヘルスインタビュー」において、同意の記録を改ざんできない形で保全し、AIへの質問と回答をログとして記録しています。
「ヘルスインタビュー」の詳細はこちらです: https://aibtrust.jp/healthinterview
匿名加工情報を用いた場合、このうち出所・本人同意・加工・推論利用の各項目を記録することができません。学習に用いたデータの適正性を証明できることが、医療分野におけるAI活用の前提になると考えられます。
米国市場の動向と本プログラムでの取り組み
米国では、患者本人が自らの医療情報にアクセスし、その利用方法を決定できる制度の整備が進んでいます。2016年12月に成立した21st Century Cures Actは、患者が自らの電子医療情報に「特別な努力なく」アクセスできることを国の政策目標として明記し、情報ブロッキングを違法としました。2020年5月にはCMS-9115-F最終規則により、Patient Access API(FHIR)が義務化されています。欧州でも、欧州医療データスペース規則が2025年3月26日に発効し、本人のアクセス・訂正・可搬の権利、および二次利用へのオプトアウト権が定められています。
一方、日本では2026年7月10日に改正個人情報保護法が成立し、統計作成等を目的とする場合には、要配慮個人情報についても本人同意なく第三者提供できる特例が新設されました。
AIBTRUST株式会社は、本人の同意にもとづき来歴を証明できるデータでAIを開発するというアプローチが、規制環境の異なる米国市場においても有効であるとの評価を受け、今回の採択に至ったと認識しています。

本プログラムを通じて、AIBTRUST株式会社は以下の4点に取り組んでまいります。
- 米国の規制・制度の理解:HIPAA、Cures Act、CMS規則など、日米で異なる医療データの取扱いを把握し、基盤へ反映します。
- エビデンスの構築:来歴を伴うデータがAIの品質および監査可能性に与える効果を、米国市場で求められる形式で整理します。
- 事業戦略の策定:ターゲット領域、提供価値、パートナーシップ方針を具体化します。
- 現地パートナーとのネットワーク構築:本プログラムを通じて得られる関係機関との対話を通じ、協業機会を探索します。
今後の展開
AIBTRUST株式会社は、本プログラムで得た知見を、国内におけるプロダクト開発および導入拡大にも還元していく方針です。国内医療機関での実装を積み上げながら、海外展開に向けた体制整備を並行して進め、患者・医療機関・研究開発の三者に価値が還元される医療データ流通基盤の実現を目指しています。
参考情報
AIBTRUST株式会社 概要
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代表者:代表取締役 森岡 康一
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設立:令和5年12月
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所在地:〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町6番38号 グラングリーン大阪北館 JAMBASE 6階 JAM-DESK
AI Workstyle Lab編集部コメント
AIBTRUST社の「J-StarX US Healthcare Breakthroughプログラム」への採択は、医療AIの信頼性確保という世界的な課題に対する日本発のソリューションが、国際的に評価された証と言えるでしょう。データ汚染のリスクが高まる中で、データの出所や同意を記録し、その信頼性を検証可能にする「TRUST基盤」は、AI倫理やガバナンスの観点からも極めて重要な技術です。今後は、米国市場での実証を通じて、この基盤がどのように医療AIの品質向上と普及に貢献し、国際的なデータ流通の新たなモデルを構築していくのかに注目が集まります。各国の規制動向も踏まえ、技術的・倫理的な課題をいかに解決していくかが、今後の医療DXの鍵となるでしょう。
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本記事は、各社の公式発表および公開情報を基に、AI Workstyle Lab編集部が 事実確認・再構成を行い作成しています。一次情報の内容は編集部にて確認し、 CoWriter(AI自動生成システム)で速報性を高めつつ、最終的な編集プロセスを経て公開しています。

