AI活用は進化ではなく革命
ブランコ氏は冒頭で、「AI活用は単なる進化ではなく、本当の意味での革命です」と述べました。NVIDIAの本質は単なるチップメーカーではなく、「AI革命を支えるプラットフォーム」であり、チップ、インフラ、モデル、アプリケーションに至るまでを統合された一つのスタックとして提供していることが、あらゆるAI企業がNVIDIAを必要とする理由だと説明しました。
もう一つ重要な点として、オープンソースへの強いコミットメントが挙げられます。NVIDIAはモデルだけでなく、学習データや学習済みの重みまで含めて公開しており、利用者は新しいビジネスを創造できます。ブランコ氏は「AIイノベーションはオープンソースモデルの上で起きます。金融業界においても、自らコントロールできるインテリジェンスの構築が不可欠です」と強調しました。

AIファクトリーは銀行にとって歴史的な転換点
金融サービスは年間約1.2兆ドルの利益を生み出す世界最大の利益産業であり、AIを活用したプロセス改善だけで2,000億〜3,400億ドルの追加利益が生まれると試算されています。これは年間利益が最大約20%増加することに相当しますが、実際の可能性を過小評価しているかもしれません。例えば、詐欺被害だけでも年間5,000億ドル超の損失が発生しており、その額は毎年10%以上のペースで増加しています。AIによる詐欺検出の改善は、数千億ドル規模の価値を生み出す可能性があります。
NVIDIAの調査レポート(https://www.nvidia.com/ja-jp/industries/finance/ai-financial-services-report/)によると、99%の企業がAI投資を継続または拡大すると回答し、89%が既にAIによる収益増、コスト削減を実感しています。また、84%がオープンソースの重要性を認識しています。ブランコ氏は、1961年にバークレイズがメインフレームを導入して以来、銀行業の本質は長らく同じでしたが、構造は大きく変わり始めていると指摘。「未来の銀行はデータセットではなくインテリジェンスで動きます。2025年には複数の大手銀行がAIファクトリーを導入しました。これは60年代のメインフレーム導入に相当する転換点です」と述べました。
多数の専門特化型モデルによって構成される未来の銀行
AI中心の銀行は、独自の自社データとオープンソースモデルを組み合わせることで実現できます。例えば、大阪における商業用不動産融資の判断基準や、日本および米国地域におけるリスクに対する考え方、気象リスクの評価などは、他の誰も持ち得ない固有の資産です。このデータとオープンソースモデルを組み合わせることで、各銀行独自のインテリジェンスが生まれます。ブランコ氏は「銀行の中核となるインテリジェンスは、自分たちで構築すべきです」と強調しました。
重要なのは、モデルの事前トレーニング、ファインチューニング、そして蒸留です。これにより、モデルの学習、必要なタスクに合わせた調整、そして求められるサイズへの縮小が含まれ、安い、速い、正確という3つの実利が得られます。未来の銀行では、与信審査に特化したモデル、商品や価格知識に特化したモデル、顧客行動をよりよく理解するトランザクションモデルなど、各タスクに最適化された複数の専用モデルを持つことになるでしょう。
業務効率が劇的に向上
モデルの活用先として、まず既存プロセスの改善が挙げられます。たとえばトランザクションモデルを構築すれば顧客の行動を高精度に予測でき、これは不正検知や次の商品提案など多くの用途に活用可能です。
モデルの活用は、従業員の生産性向上にも貢献します。分析や調査などにかけている時間を短縮できれば、顧客と向き合う時間を増やすことができます。グローバル投資銀行であるRBC Capital Markets(https://www.nvidia.com/en-us/case-studies/rbc-capital-markets/)では、アナリストが40時間かけていた分析時間を15分に短縮し、カバー銘柄数が1,500銘柄から2,500銘柄へと増加しました。ブランコ氏は、以前は一晩に何時間もかかっていたリスク分析や価格算定に関する高負荷な計算について、GPUを活用することで1時間未満に短縮された事例も紹介しました。これにより新たな時間が生まれ、新しい分析や発見、そして機会の創出につながっています。
「銀行とは何か」を再定義する
ブランコ氏は「AIは進化ではなく革命です。金融業はデータ産業であり、AIはデータをインテリジェンスに変換します。AIファクトリーは、この機会をスケールさせるための基盤です。これはもはや技術の課題ではありません。技術はすでに存在し、機能しているのです。課題はビジネス側にあり、ビジネスの観点から、どのようにAIに投資し、活用すべきかを考える必要があります。どの銀行も、『銀行とは何か』を再定義する必要があります。今後10年はこのイノベーションの連続になるでしょう」と締め括りました。
日本を代表する8つの機関が、最新の取り組みを公開
続いて、NVIDIAのプラットフォームを活用する日本の企業や機関が、データ主権と精度を両立した、金融業務のためのAI変革にいかに取り組んでいるかを明かしました。
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京都大学経営管理大学院 特定准教授 南正太郎氏
「金融を変える情報品質保証LLM ― 4つの稼働システムと、その根底にある理論 ―」と題して講演。情報品質を数学的に保証するLLMと、AI時代に求められる新しいOSの必要性について解説しました。研究室では、NVIDIA Nemotron(https://www.nvidia.com/ja-jp/ai-data-science/foundation-models/nemotron/)、NVIDIA NeMo Curator(https://developer.nvidia.com/nemo-curator)、NVIDIA NeMo Guardrails(https://developer.nvidia.com/nemo-guardrails)、NVIDIA DGX Spark(https://www.nvidia.com/ja-jp/products/workstations/dgx-spark/)などを活用し、次世代の高信頼AI基盤の構築を進めています。 -
KDDI エキスパート 樋口 裕貴氏
「MUFG-KDDIの協業2.0の裏側」と題した講演で、グローバルモデルでは対応が難しい「機密性」「専門性」「モデルの固定性」が求められるユースケースにおいて、オンプレ相当環境での金融特化型AIの取り組みを紹介しました。KDDI大阪堺DCにてNVIDIA GB200 NVL72(https://www.nvidia.com/ja-jp/data-center/gb200-nvl72/)を始めとした基盤等の活用について議論を進めており、将来的には金融機関向けエコシステムの提供を展望しています。 -
大和総研 基盤技術第一部 シニア ITインフラ・アーキテクト 及川 涼太氏
「オンプレGPU × NVIDIA NIMによる実環境検証」と題した講演で、オンプレミスGPU環境においてNVIDIA NIM(https://www.nvidia.com/ja-jp/ai-data-science/products/nim-microservices/)を活用し、音声文字起こしおよび文章要約をローカルLLMで実現する検証プロジェクトを紹介しました。NVIDIA GPUとNIMを用いて大規模並列処理時の性能・安定性を評価した結果、他プラットフォームと比較して高性能・高効率を引き出せることを確認しました。 -
野村総合研究所(NRI)チーフエキスパート 岡田 智靖氏
「業界・タスク特化型LLMの効率的かつ高精度な構築手法:金融規制対応を題材に」と題して講演。GENIACプロジェクトにおいて、NVIDIA GPUを活用し、中規模オープンLLMをベースとした金融業界・タスク特化型モデルを開発しました。学習データの収集・合成にはNVIDIA NeMo Curatorを活用。証券・保険領域における3つの実務タスクにおいて、いずれもGPT-5.2を上回る精度を達成しました。 -
ファーストアカウンティング 共同創業者、執行役員、FA Research チーフサイエンティスト 藤武 将人氏
「Nemotron及びNeMo Data Designerを用いた企業文書特化型言語モデル開発」と題して講演。企業文書に強いSLMの構築に向け、契約書理解を実現する取り組みを紹介しました。NVIDIA Nemotron、NeMo Data Designerに加え、NVIDIA DGX B200(https://www.nvidia.com/ja-jp/data-center/dgx-b200/)を活用し、合成データを起点に要約・属性抽出・レビュー生成を高度化。検証では情報抽出精度が89%から100%に向上しました。 -
みずほフィナンシャルグループ デジタル戦略部 テクノロジー第二チーム ヴァイスプレジデント 皆川 拓氏
「金融特化LLMの構築と銀行実務テスト評価 〜 業務特化モデル実現に向けて〜」と題して講演。NVIDIA GPUを活用し、金融実務全体を支えるAI基盤「みずほLLM」の段階的な構築を進めています。第一段階となる金融特化LLMでは、推論に依存しない条件下で汎用LLMと同等水準の精度を達成。現在は第二段階として、NVIDIA NeMo Curatorによるデータ前処理とNemotron-Personas-Japan(https://huggingface.co/blog/nvidia/nemotron-personas-japan-ja)を活用した学習データ拡充の可能性を探っています。 -
楽天グループ Vice General Manager, AI & Data Consulting Department Manager, Fintech Product Group, Rakuten Institute of Technology 柴田 祥氏
「ファインチューニングによる金融領域に特化したVertical LLMの実現」と題して講演。楽天グループは、金融機関に不可欠な機密性と安全性を確保しつつ、金融関連タスクを実現できるようなVertical LLMを開発する際の設計思想や学習手順、性能比較のための実験結果、データセットの前処理におけるNVIDIA Nemo Curatorの活用等について紹介しました。 -
リコー 経営企画本部 AIサービス事業部 AI事業開発センター エキスパート 岡本 敏弘氏
「オンプレミスで進める業務主導型生成AI活用」と題して講演。生成AI開発ツールDifyによるNemotron-Nano-9B-v2-Japanese(https://huggingface.co/blog/nvidia/nemotron-nano-9b-v2-japanese-ja)の利用、kintoneおよび社内ストレージとの業務システム連携、財務情報などの画像読解を起点とした事業性評価や融資稟議書の下書き作成を示しました。これらの活用例はサンプルアプリとして提供予定です。
金融AIを加速させるテクノロジの展示
会場では、金融業務におけるAIアプリケーション開発を加速させるソリューションのデモも展示されました。
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マクニカ
「金融機関向けオンプレミスLLM:ペルソナ型市場調査シミュレーションとデータ主権の両立」をテーマに展示。NVIDIA Nemotron-Nano-9B-v2-JapaneseおよびNemotron-Personas-Japanを活用し、日本の地理的、人口統計的な実分布を反映したペルソナベースのサーベイシミュレーションをDGX Spark上で実現しています。モデルのファインチューニングにはNVIDIA Hopper GPUを活用し、japanese-lm-fin-harnessベンチマークにおいてフロンティアLLMに匹敵する性能を達成しました。
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Ippu Senkin(イップセンキン)
NVIDIA InceptionのメンバーであるIppu Senkinは、金融特化型のソリューションとして設計されたオンプレミス生成AIサービス「Local AI Agent」を展示しました。社内データベースとの連携による文書作成からコーディングまで多様な業務をローカル環境で自律処理し、エンジニア向けCLIと非エンジニア向けGUIの両インターフェースにて利用可能です。NVIDIA BlackwellアーキテクチャのGPUを採用し、Nemotronを含むマルチモデルに対応することで、高速、高精度な稼働を実現しています。
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Dataiku(データイク)
データ準備から機械学習モデルやAIエージェントの構築までをGUIで一貫して行えるデータ分析プラットフォームを展示しました。NVIDIAとのコラボレーションにより、GPUインフラに加えてNVIDIA NIMやNeMotronを統合し、専門的なプログラミングスキルがなくてもセキュアで低遅延なLLM環境を容易に構築できるソリューションを提供しています。Dataikuが提供する金融サービス向けAIアーキテクチャ「FSI Blueprint」や「AI Factory Accelerator」はすでに世界の金融機関で導入が進んでいます。
金融サービス向けのNVIDIA AIソリューションおよびエンタープライズ向けAIプラットフォームについては、こちらをご覧ください。
https://www.nvidia.com/ja-jp/industries/finance/
AI Workstyle Lab編集部コメント
今回のNVIDIAの発表と日本企業の事例は、金融業界におけるAI導入が「いかに効率化と収益向上に直結するか」を明確に示しています。不正検知から顧客エンゲージメント、アナリスト業務の劇的な時間短縮まで、その活用領域は多岐にわたります。特に、自社データとオープンソースモデルを組み合わせた「専門特化型モデル」の構築は、各銀行独自の強みを最大限に引き出す鍵となるでしょう。AIファクトリーの概念は、金融機関が新たな競争優位を確立するための必須戦略であり、今後のビジネスモデル変革に大きく貢献すると考えられます。
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本記事は、各社の公式発表および公開情報を基に、AI Workstyle Lab編集部が 事実確認・再構成を行い作成しています。一次情報の内容は編集部にて確認し、 CoWriter(AI自動生成システム)で速報性を高めつつ、最終的な編集プロセスを経て公開しています。

