研究の背景
不動産の価格や賃料を高い精度で予測することは、適正価格の客観的な目安を提供し、価格設定や投資判断を支援する上で重要です。しかし、不動産価格は立地、面積、築年数など多様な要素が複雑に絡み合って決まるため、予測が難しく、これまで専門家の鑑定に頼る部分が多くありました。
近年、機械学習による価格予測は進歩しましたが、モデルの精度向上には不動産とデータサイエンス双方の専門知識が必要であり、特徴量の設計やモデルの組み合わせを試す試行錯誤に多くの時間と人手がかかります。既存の自動化手法(AutoML)は最適化過程がブラックボックスになりやすく、不動産のような業界特有の知見を取り込みにくいという課題がありました。特に、賃料予測のような専門性の高いタスクにおいて、モデル改善プロセスそのものを自動化する研究はほとんど進んでいませんでした。
研究の概要:LLMによる不動産価格予測モデルの自動改善枠組み「CARRE」
本研究では、LLMの幅広い知識と推論能力を活かし、不動産価格予測モデルの改善を自動で「計画・実装・評価」する枠組み「CARRE(Comprehensive Automated Refinement for Real Estate Using Large Language Models)」を提案しました。
CARREは、以下の4段階のサイクルをLLMが繰り返し実行します。
- 改善案の提案
- Pythonコードの自動実装
- 検証データでの評価
- モデルの診断
このサイクルを通じて、すべての試行の中から最も精度の高いモデルを選び出します。予測の土台には、不動産価格予測で実績のある勾配ブースティング(LightGBM)が用いられました。
CARREの主な特徴は、モデル改善を閉ループ最適化として定式化している点にあり、次の3つの柱で構成されています。
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改善の履歴を蓄積しながら回す閉ループ最適化で、過去の試行を踏まえ同じ提案の繰り返しを回避します。
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物件の属性ごとの誤差の傾向をLLMへ細かくフィードバックし、データに即したきめ細かな推論を実施します。
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複数の改善案を並列に試す多候補生成により、探索の幅と安定性を両立しています。

この仕組みにより、最適化の過程が見えにくい従来のAutoMLとは異なり、なぜその改善が有効かを言語化しながら、不動産ならではの知見を取り込んだモデル改善を自動で進めることが可能になります。これにより、専門家によるモデル改善作業を支援し、効率化する可能性を秘めています。
検証には、独自に収集した日本の賃貸データ(全国の賃貸物件約8,800万件を母集団とし、都道府県ごとに偏りが出ないよう抽出した99,975件)と、公開データセットのCalifornia Housingが用いられました。
研究の成果
本研究の成果として、以下の点が確認されています。
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ベースとなるモデルに対し、すべての評価指標で統計的に有意な改善を確認しました(p < 0.001)。
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日本の賃貸データでは、決定係数(R²)、二乗平均平方根誤差(RMSE)、平均絶対パーセント誤差(MAPE)のすべてで最良の性能を達成しました。
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公開データのCalifornia Housingでは、すべての指標で最良の結果となり、ベースモデルと比べて平均絶対誤差(MAE)が約13%、平均絶対パーセント誤差(MAPE)が約16%改善しました。
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既存の代表的なAutoML手法と比較しても、同等以上の性能を達成しています。
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GPT-5.2系、Claude Sonnet 4.6、Claude Opus 4.6など、十分な推論能力を持つ複数の大規模言語モデルで安定して改善が得られ、手法が特定のモデルに依存しないことが確認されました。
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改善の過程では、都道府県ごとの位置情報を活かした地理的な特徴量の追加や複数モデルのアンサンブル化など、人にとっても解釈可能な改善策を、LLMを用いた探索により自律的に獲得しました。
本研究のソースコードは以下のURLで公開されています。
株式会社estie 取締役CTOの岩成 達哉氏は、今回の研究が「モデルをどう良くするか」という工程そのものをLLMが自ら計画し、実装し、評価しながら回せることを示したとコメントしています。また、単に精度が上がるだけでなく、改善が有効な理由を言葉で説明でき、不動産ならではの知見を取り込める点を重要視し、今後の研究成果の不動産業務への活用に期待を寄せています。
研究メンバー
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髙辻 優太(東京大学、筆頭著者)
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岩成 達哉(株式会社estie 取締役CTO)
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勝田 良介(株式会社estie VP of Products)
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増田 俊太郎(東京大学)
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易 聖舟(東京大学)
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山崎 俊彦(東京大学 教授)
採択された国際会議「IEEE MIPR 2026」について
IEEE MIPRは、マルチメディア情報処理と情報検索の分野における国際会議です。第9回となる本年は、タイ・バンコクで開催されます。
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会議名:IEEE MIPR 2026(第9回 IEEE International Conference on Multimedia Information Processing and Retrieval)
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会期:2026年8月9日〜8月11日
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開催地:タイ・バンコク
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公式サイト:IEEE MIPR 2026
東京大学 山崎研究室について
東京大学 大学院情報理工学系研究科 電子情報学専攻の山崎研究室は、コンピュータビジョン、マルチメディア、機械学習、パターン認識などを専門とする研究室です。研究成果の実社会サービスへの社会実装にも力を入れています。
- 公式サイト:東京大学 山崎研究室
不動産AI Labについて
estieが2025年に設立した「不動産AI Lab」は、「不動産×AI」の領域において研究開発など先進的な取り組みを行い、不動産業界のお客様のAI活用を支援する研究開発組織です。
- 公式サイト:不動産AI Lab
株式会社estieについて

estieは、「産業の真価を、さらに拓く。」をパーパスに掲げ、不動産業界全体のデジタルシフトとコアビジネスの高度化および効率化を推進しています。商業用不動産データ分析基盤「estie オフィスリサーチ」などを展開し、不動産データと業界特化型AIを活用したソリューションを提供しています。
AI Workstyle Lab編集部コメント
今回の研究は、大規模言語モデル(LLM)が不動産価格予測という専門性の高い領域において、モデル改善プロセスそのものを自動化できる可能性を示しています。これにより、不動産デベロッパーや投資家は、より客観的かつ効率的に適正価格の目安を得られるようになり、高精度な価格設定や投資判断が可能になるでしょう。将来的には、不動産取引における意思決定の迅速化や、専門家の業務負担軽減にも繋がり、業界全体のDXを大きく推進する重要な一歩となると考えられます。特に、業界特有の知見をLLMが学習し、解釈可能な改善策を提案できる点は、実務での導入を加速させる要因になるはずです。
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本記事は、各社の公式発表および公開情報を基に、AI Workstyle Lab編集部が 事実確認・再構成を行い作成しています。一次情報の内容は編集部にて確認し、 CoWriter(AI自動生成システム)で速報性を高めつつ、最終的な編集プロセスを経て公開しています。

