日本発の研究者が世界を牽引:ECCV 2026「FOUND」ワークショップが示す実世界AIの未来と「基盤データ」の役割

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世界トップ会議「ECCV 2026」で国際ワークショップ「FOUND」開催

2026年9月8日から12日(現地時間)にスウェーデン・マルメで開催されるコンピュータビジョン分野の世界トップ国際会議「ECCV 2026」において、キャディ株式会社、SB Intuitions株式会社、LINEヤフー株式会社に所属する研究者が、併設ワークショップ「FOUND(Foundation Data for Industrial Tech Transfer)」の主催を務めることが発表されました。

このワークショップは、実世界AIの社会実装に不可欠とされる「基盤データ(Foundation Data)」の創出と技術移転をテーマとしています。世界中の研究者が知識を共有し、議論を深める場を提供することを目指しています。

ECCCV 2026 FOUNDワークショップの告知ポスターです。2026年9月9日午前にスウェーデンのマルメで開催され、AIとデータに関する多岐にわたるトピックが議論されます。著名な基調講演者と主催者が紹介されており、ウェブページとノミネーション用のQRコードも含まれています。

ワークショップ「FOUND」の概要

「FOUND」は、2026年9月9日(水)にスウェーデン・マルメのMalmö Arena and Malmömässanで開催されます。詳細情報は以下のURLで確認できます。

ECCVは、European Computer Vision Association(ECVA)が主催し、1990年から隔年で開催されるコンピュータビジョン分野の主要国際会議の一つです。ICCVやCVPRと並ぶ世界三大国際会議とされており、併設ワークショップは厳格な提案審査を経て採択されます。日本の企業研究者が主導する事例は多くありません。

「FOUND」では、近年のAI技術の進展を踏まえ、実世界の課題解決に焦点を当てています。基盤モデル(Foundation Models)はコンピュータビジョンを大きく進展させましたが、実世界の現場では、稀なケースや運用上の制約により信頼性の確保が課題となっています。この課題を解決するためには、優れたモデルだけでなく、現実の変動を捉えた「基盤データ」が不可欠であるとされています。「FOUND」は「基盤データの創出」と「実世界への技術移転」を柱に、Physical AIとWorld Modelsを重点テーマとして議論します。

主なテーマは以下の通りです。

  • 非インターネット/ドメイン固有領域における基盤データの収集・キュレーション・ラベリング

  • ドメインに根ざしたデータのための自己教師あり・半教師あり・弱教師あり学習

  • ドメインギャップを埋め、希少なコーナーケースを網羅する合成・シミュレーションデータ

  • 産業実装におけるドメインシフト・OOD・ロングテール分布へのロバスト性

  • Physical AIとWorld Models:身体性を持つシステムやインタラクティブなシステムのためのデータと転移戦略

  • 実世界AIに向けた、実装に整合した評価プロトコルと責任あるデータガバナンス

招待講演者には、Stanford UniversityのIro Armeni氏、ETH Zurich / Microsoft Mixed Reality and AI LabのMarc Pollefeys氏、Imperial College London / AMI LabsのAmir Bar氏、SEBx / LinkのAnastasia Varava氏が名を連ねています。

ワークショップ採択の背景とスポンサー

本ワークショップは、AI技術のより広い産業界への応用を目指し、ドメイン特化の基盤データ構築と各分野固有の課題解決をアカデミアと連携して議論する場として、2025年のICCV(ホノルル)で第1回が開催されました。初回は日本企業を中心に複数社が協賛し、産業界とアカデミアの接点としての確かな手応えを得ました。第2回となる今回は、Physical AIやWorld Modelsといった実世界への技術移転に直結するテーマに焦点を当てた構成となっています。

今回のワークショップのスポンサーは以下の3社です。

  • キャディ株式会社

  • Sansan株式会社

  • SB Intuitions株式会社

オーガナイザー紹介

本ワークショップは、産業界とアカデミアをまたぐ国際研究コミュニティLIMIT.Lab(サイト構築はcvpaper.challenge Dev Team)を母体に運営されています。オーガナイザーには、キャディ、SB Intuitions、LINEヤフー(LY Corporation)、Sansanの研究者に加え、産業技術総合研究所(AIST)、東京大学、Ericsson、Qualcomm AI Research、Woven by Toyota、Google Researchの研究者が名を連ね、国内外の産学が連携して運営にあたります。

  • キャディ株式会社 シニアリサーチエンジニア/産業技術総合研究所(AIST)特定フェロー:福原 吉博氏
    明るい背景の前で、笑顔を見せる短髪のアジア人男性のポートレート。紺色の服を着用し、親しみやすい印象を与えている。
    福原氏は、産業界の現場には既存の汎用的なデータやモデルだけでは解決できない課題が数多く存在すると指摘しています。特に製造業では、実務で使用されるデータがインターネット上にほとんど存在せず、汎用的なアプローチが通用しにくい領域です。FOUNDは、実問題に向き合う研究者とアカデミアの研究者が議論できる場を提供することで、産業界とアカデミアをつなぐ有力なアプローチの一つであると考えています。

  • Sansan株式会社 研究開発部 Automationグループ 機械学習エンジニア:大竹 ひな氏
    白い背景の前で、グレーのチェック柄スーツと薄紫色のスカーフを身につけた若い女性が笑顔で立っているポートレートです。プロフェッショナルで好印象を与えます。
    大竹氏は、Sansanが掲げる「出会いからイノベーションを生み出す」ミッションにおいて、名刺や請求書といったアナログ情報を正確にデータ化する技術が中核をなすと述べています。ビジネス文書は固有の語彙やレイアウトを含み、汎用的なOCRでは正確な読み取りが困難であるため、領域に特化したモデルが求められます。FOUNDの主題である汎用データと産業データのギャップや基盤データの重要性は、Sansanが日々向き合う課題と親和性が高く、アカデミアと産業界の協働を深める場となることを期待しています。

  • SB Intuitions株式会社 Principal Research Scientist:山口 晃一郎氏
    白い背景の前で、紺色のジップアップジャケットを着用したアジア系の男性が、穏やかな笑顔を浮かべている上半身のポートレートです。
    山口氏は、大規模言語モデルなどの生成AI技術が各産業に革新をもたらす一方で、Physical AI領域では現実空間のデータ不足が大きな課題であると述べています。SB IntuitionsのPhysical AI部では、この課題解決に向け3次元データの生成やシミュレーション環境、World Modelの構築に取り組んでいますが、依然として多くの課題が残されています。FOUNDワークショップは、こうした課題解決に向けた最新研究成果や方向性を共有し、グローバルな研究者間の連携が進み、Physical AIの社会実装が加速することを期待しています。

  • LINEヤフー株式会社:北田俊輔氏
    カラフルな赤と緑の髪が特徴的なアジア人男性のポートレート。黒い襟付きシャツを着用し、カメラをまっすぐ見つめています。背景は明るくぼかされた屋内空間です。
    北田氏は、昨年のICCVに続きFOUNDをECCV 2026でも開催できることを喜ばしく感じていると述べています。日本発のワークショップ提案が採択され、世界の研究者に向けて新たな論点を発信できることを光栄に感じているとのことです。ChatGPTや画像生成AIなどの「基盤モデル」が注目される中で、その性能や信頼性を支える「基盤データ」の重要性は一層高まっています。FOUNDを通じて、これまでモデル開発の前提として扱われがちだったデータそのものに光を当て、Foundation Dataという視点から次世代のAI研究を考える契機を作りたいと考えています。

今後の展望

キャディ、Sansan、SB Intuitions、LINEヤフーの4社は、今後もCVPR 2026(VGI・BigMACワークショップ)をはじめとする主要国際会議での継続的な貢献を通じて、コンピュータビジョン分野の最前線を日本からリードしていく方針です。

各社の概要

  • キャディ株式会社https://caddi.com/ja-jp/company/
    「物的イノベーションを10倍加速する」をビジョンに掲げるグローバルスタートアップです。製造業のバリューチェーン上のデータをAIで解析し、「製造業AIデータプラットフォームCADDi」を提供しています。

  • SB Intuitions株式会社https://www.sbintuitions.co.jp/
    ソフトバンクの子会社として、日本語に強い国産生成AI「Sarashina」シリーズを核に研究開発を進めています。国内最大規模の計算基盤とデータ管理を強みに、生成AI技術とロボティクス分野のAI研究開発に取り組んでいます。

  • LINEヤフー株式会社https://www.lycorp.co.jp/ja/
    2023年10月に誕生した日本最大級のテックカンパニーです。「WOW Our Users!」をミッションに、検索・ポータル、eコマース、メッセンジャー、広告など多様な事業を展開しています。

AI Workstyle Lab編集部コメント

今回の「FOUND」ワークショップは、従来の汎用的な基盤モデルでは対応しきれなかった、実世界の産業現場における「基盤データ」の重要性に焦点を当てています。これは、AI技術をより深く社会に根付かせ、具体的な課題解決へと導く上で不可欠な視点です。特に、製造業のようなドメイン固有のデータが不足している分野では、特定のニーズに合わせたデータ収集・キュレーション・合成技術が今後のAIモデル性能を大きく左右するでしょう。本ワークショップでの議論は、Physical AIやWorld Modelsといった次世代AIシステムの進化を加速させ、産業界におけるAI活用のラストマイル問題を解決する鍵となることが期待されます。

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記事の著者
AI Workstyle Lab 編集部

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